児島先生への質疑&回答

ネット上の医療情報に過食症に関する報告が二つ出ていたので、グレリン(ghrelin)御研究の児島先生にお聞きしました。それと合わせて、グレリン研究による過食症治療についても少し。

1つは、PWSの過食症オキシトシングレリンの両方の作用によるとする報告について。
2つ目は、PWSの年長さんの胃のバイパス手術の報告に関連して(グレリンと関連するか否か)
以下転載を快諾いただきました。

グレリンの大量投与によって、オキシトシン濃度が少し上昇します。ですから、関係はあります。ただ、オキシトシンは結構、いろんなペプチド・ホルモンによって濃度
が上昇するため、グレリンの影響がどのくらいかはわかっていません。

>異常に多いのはGH不足からくるのではないと確定できるのでしょうか?

僕はそう考えています。やはり根本的にPWSの遺伝子の変化によって、グレリンの分
泌・合成が増えているのではないかと考えています。GH投与患者で、あまりグレリン
濃度の変化がないことからも、そう考えています。

>るものを、適度な濃度になるように非活性化することは可能なのでしょうか?

>除去することはできないのでしょうか?
>取り除く事ができたとして、過食の治療法に結びつくでしょうか?

 活性のあるグレリンが血中を流れる間に分解されるのですが(これはどのホルモン にも起こります)、分解された非活性型のペプチドは受容体にくっつきにくくなります。ホルモンは受容体にくっついてから、血中から除去されるので、うまく受容体にくっつかなくなると、除去されにくくなります。そのため非活性型のグレリンが血中に多く存在しているのです。こちらで進めている研究にグレリンを修飾する過程の研究があり、このグレリン修飾酵素グレリンの活性調節にも重要です。ですからこの酵素の阻害剤を開発できれば、グレリンの活性化を抑えることが可能です。この酵素阻害薬はやはり、過食治療薬の良い候補です。残念ながらまだこの酵素が発見されておらず、わたしたちも一生懸命に探しています。グレリンの阻害剤だけでなく、この酵素阻害剤も、有効だと思います。

>ますね?

そうだと思います。たぶん胃のバイパス手術でグレリン濃度は半減しているでしょうから、体重減少に効果があるのでしょう。グレリン阻害剤が期待される理由でもあります。

では、ホームページ、あせらずにしっかりやっていってください。賛同者も次第に増えていくのは心強いものですね。

久留米大学分子生命科学研究所
遺伝情報研究部門
児 島 将 康
2003年11月26日

ありがとう、ございました。先生のメールにグレリン研究に、また御一人御医者さんが参加されることになったとありました。研究の輪が広がり、加速して過食症治療法が開発される事を切に願います。