「世界遺産 ポンペイの壁画展」

兵庫県立美術館のブロガー内覧会に前回のモランディ展に続いてラッキーに当選したので、閉館後に美術館に集合し拝見しました。丁寧なサポート感謝です。

世界遺産 ポンペイの壁画展」
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1610/index.html
兵庫県立美術館のwebより引用

最初に、展覧会の担当学芸員さんから詳しく解説がありました。
ポンペイや壁画の手法のフレスコ画についてはあまり知らなかったので、解説によって理解が深まりました。
生乾きの漆喰壁に水に溶いた顔料で描くので乾くまでに描かないといけないのでフレッシュな新鮮なという(イタリア語でフレスコ)意味らしい。
漆喰故に湿気に弱い性質が、ポンペイの悲劇的な火山爆発によって一瞬に灰に覆われたことによって、それが乾燥剤の役目を果たし、紀元前に描かれた壁画が発掘後も新鮮な色彩を放つことに結果なったとの事。
壁画故にその移設は高度な技術が必要で初期は小さな断片しか切り出せなかったが、技術の進化により大きな壁画がそのまま薄く切り出せるようになったそうです。
それでも今回の最大の壁画では重量が500kgもあるそうで、搬入&壁面への展示が最大の難関だったそうで、搬入時の光景もスライドで見れました(画像転載許諾済)

リフター使って8人掛かりだったそうです。

それから、順次展覧会会場へ観に行きました。
第一章から、第四章までテーマ別の展示でした。全部の写真撮影できましたし、全部紹介したい衝動にかられますが、中からピックアップして紹介しますと、室内の再現展示が私的にはとても良かったですね。

カルミアーノ農園別荘の壁画
まるで現地の展示室に居るかのようです。

これは比較的新しい発掘時なのか、これは額縁なしで、下地も見える展示になっています。下地はアルミハニカムで極力軽くした仕様になっていました。今回、表面だけでなく、切り取り方の違いによる側面や断面も注目点ですね。

こちらはポンペイではないですが、火山爆発の酷い被害を受けたエルコラーノという都市のアウグステウムという皇帝を称える為の宮殿の壁画です。

解説では、『エルコラーノのアウグステウムの壁画は1739年の出土と早いため、壁をごっそり切り出してきた』そうで、重い為か当時の考え方からなのか、大きな額縁に入れられていました。
また、『壁画で湾曲しているものは、半円形のエクセドラを飾っていたもので、建物の最奥にあった壁龕(へきがん)部分のため、もともと湾曲して』いるそうです。
私が気になった壁画中央右側がさらに前側に湾曲した不思議な形状の「テセウスのミノタウルス退治」の前側への湾曲は、『火砕流によって変形したのかもしれません。(エルコラーノは高温の火砕流に飲み込まれました)』ということでした。

今回の展覧会のトークショーのゲストのヤマザキマリさんと、とり・みきさんが特にお薦めだったのが、天球儀の壁画だそうです。
解説の中で、私が特に興味を持ったのは、修復の手法で、修復した部分と元々の触っていない部分とを明確に区別する為に、修復した箇所の描き方は、バーコードのように細い縦縞で描かれているという部分でしたし、この天球儀の壁画でも特徴的に観る事ができました。

左下の辺りの修復の縦縞の跡。

これら修復の手法や、また断片を集積して、完全に破壊されて復元できない箇所は空白のまま余白のまま残しつつの方法を見ていると、そのテイストのなかに、現代アートの視点と似通ったものを強く感じました。
最近、このはな区のthe three konohanaさんで拝見した、テンペラ画の加藤巧さんの絵画を私は思い出していました。

加藤巧「ARRAY」
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20160803/art

加藤さんの作品は、フレスコ画ではありませんが、フレスコ画のその後の進化形のような手法ですし、加藤さんの自己のドローイングを、テンペラ(溶剤に卵を用いる)で小さなドットに分解して細密に再現していく様と、今日拝見した、ポンペイ壁画のフレスコ画修復での、バーコードのような縦縞による修復の有り様とが、とても重なって見えてきて不思議に感じました。

おそらく、修復というクリエーションでは無いが、過去の時代の遺産に見事にフィットする感覚が、ほんの少し前の過去の自分のドローイングの精密な再現の感覚と、重なって感じられたのでしょうし、そのテイストは、現代の私達の感覚とも、馴染み易い感覚なのではと感じました。

最後に、こういう楽しい展示物も好きですね。フレスコ制作道具の解説の画像ですが、並べ方で顔のような。
素晴らしい展示でした、感謝。