秋山ブク「コンポジション10番:psmgの備品による」

ランチの後、家族と解散し、私だけ地下鉄で中津へ。PANTALOONさんへ行きました。

秋山ブク「コンポジション10番:psmgの備品による」
PANTALOONのwebより引用
http://www.pantaloon.org/

秋山ブクさんの個展は、2011年のこのはな区の「見っけこのはな」イベントの時に、梅香堂で拝見して以来でした。下記私のブログ記録(一番最後のところ)
ボン靖二、秋山ブク、中崎透と続いた日用品(もしくは不要品)シリーズとでも形容したくなる今は亡き後々田さん企画の一連の展覧会は私には衝撃的でしたし、受けたインパクトを何とか言語化しようとしたことが、展覧会レビューをその後も書き続けていることに繋がっているように思います。

秋山ブク 「コンポジション 6番:梅香堂の備品による」
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20111030/art

その時の感想をおそらく後々田さん経由で秋山ブクさん読んでくださったようで、今回の個展の案内メールを直接頂きました。
今日は個展最終日で秋山さん在廊されていて、少しお話できました。
梅香堂の個展の感想に私は下記のように記録していました。

「作品は梅香堂にもともとあったオーナーさんの私物のみを組み上げて作られているらしい。
タイヤ4個が並び、整然と組み上げられたオブジェというのか、日用品は2階の床の小さな吹き抜けのような穴を貫通して2階の天井近くまでありました。てっぺんにキューピー人形が載っていて、中間の壇には小さなビニール人形が数体来客を出迎えている。その形から、動く棺としての、だんじりを連想してしまう。」

(今、改めて読み返してみて、キューピー人形が後々田さんの私物というとこがとても嬉しくなってしまいますね)
今日のPANTALOONさんの個展では、周辺の4つのアートスペースとの同時協働開催のイベントということで、4つのアートスペースの頭文字からpsmgの備品となっているようです。
PANTALOON自体がデザイン事務所でもあり、机などとてもシャープな印象の日用品で組み上がっていました。メインの吹き抜けにタワー状に組上げた作品、周辺に小さな作品群、2階にテントをカオスな感じでつなげたものなど。(画像転載許諾済み:作品の全体を写さない条件で)

2016/03/07追記。
秋山ブクさんから、会期後は作品の全体を載せても良い旨のメール頂きましたので画像追加。


大きな木製の長机の上に作業用のテーブル(白と黒の脚のものが交互に)4個が積んであり、荷造りバンドで結束されています。
秋山さんのお話では、ビルのようなイメージで、そこに様々なものを置いていく感じ。
猫やいろいろなフィギュアもありましたが、てっぺんに花嫁のようなベールを被ったフィギュアがあり、梅香堂でのキューピー人形同様に、フィギュア的なものを置く事で、全体が模型化することをイメージされているとの事。

たしかに、日用品という「大きさに依存」するものだけでフィニッシュした場合とフィギュアを置いて、「大きさに非依存」の関係を結ぶ事で「大きさに依存/非依存」なものへと転化していくことは、とても重要なこととと思います。
正面側のシンメトリーな構成に対して、背後の部分はカオスな様相となっていました。
蛍光灯がまるでライトセーバーのよう。

全体的に円盤状、球状のものが支配的で、会場の作品群を巡ると、「もしスターウォーズデュシャンが観たとせよ」みたいなイメージを感じました。
基壇右側にあるドラムがまるでデュシャンの大ガラスのチョコレート粉砕機のよう。

特に印象的な、2階のカオスな感じで繋げられワイヤーで吊るされたようなテントによる作品は、まるでデュシャンの大ガラスの上半分の花嫁の雲状の流動的な4次元世界の表現のように感じました。

作品群から感じるユーモラスさ、強い光、会場の吹き抜けの強度などから、身体感覚が浮遊し始める。

追記。
たくさんの観客が来られていましたが、2階から降りる際、手摺の無い急な梯子階段ということと併せて、上記の身体感覚が浮遊するような体験を作品と吹抜け空間を介してするようで、多くの人が踏板に腰掛けたりしながら、慎重に一歩ずつ降りていました。1階がもともと居た場所な筈なのに、2階から降りる様は、別の新たな場所へ向かうような。

小さなコーナーに置かれていた、「彫刻台作品:3つのビニタイ」も、デュシャンの「3つの停止原器」のオマージュのようであり、かつ実際のサイズの日用品でありながら、先のお話のようにミニチュア模型のような、ユーモラスさがありますね。

刺激的な展覧会でした、感謝。