ジグソーパズルのこと

先日のPWSのドキュメントで、ジグソーパズルの能力が3倍以上ある旨の紹介があり、その根拠がよく分らなかったので、直接、制作されたフジTVに確認してみました。直接の回答は制作会社の「こころ」http://www.cocolo.tv/TOP.htmlのスタッフさんからメールでいただきました。
放送内容は、PWSとジグソーの能力に関して研究された、Dykens先生へのインタビューに基ずくとの事。2002年のDykens先生の論文では、確かに普通児との比較では2倍程度と記述があるが、インタビューの際には、最新の研究より、3倍とのお話だったらしい。回答ありがとうございました。
再度、順番に並べてみる。
1:2002年のDykens先生の論文ではPWSのジグソーパズルの能力は、2倍程度あるとされる。

Are jigsaw puzzle skills 'spared' in persons with Prader-Willi syndrome?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=11944876&ordinalpos=4&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum

In striking contrast, children with Prader-Willi syndrome scored on par with normal peers on word searches, and they far outperformed them on the jigsaw puzzles, placing more than twice as many pieces as the typically-developing group.
論文の一部引用

2:その論文をPUBMEDで読んで、直接Dykens先生にメールで質疑した、2003年のメールでの先生の回答では、普通の子供と同じ程度とのお話であった。

2003年1月4日のメールより
Some but not all children with pws have advanced puzzle skills, similar to if not better than those without difficulties. These skills are seem primarily in those with paternal deletions. Not every child shows interests in puzzles, and we are trying out figure out why there is variability in these skills.
Best of luck with your little girl, enjoy her!
Elisabeth Dykens

何人かのPWSはパズルの能力に秀でている。そして、その能力は 普通の子供より 良くはなくとも 少なくとも 普通の子供くらいある。
PWSの子供が皆そうという訳ではありません。
これらの技能は基本的に父方の遺伝子の欠如の子供におこるように思われます。すべての子供がパズルに興味を見せるわけではなく、私達はどうしてこれらの技能にばらつきがあるのかを解明しようとしているところです。
あなたの娘さんに幸運がありますように。
彼女と楽しんでください。
Elisabeth Dykens

3:2007年8月24日放送のドキュメントhttp://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20070826/memo
でのインタビュー内容では3倍あるとの事。
1〜3では、ずいぶん内容が異なる感じですが、それぞれ事実であるとすれば、いろいろなことが見えてくるかもしれません。
勝手に空想すると、2002年の論文発表で、それを読んだ専門家や患者家族が、ジグソーパズルの能力に関心を持って、結果、子ども達の能力がアップしたのかもしれませんね。
先日のドキュメントでも、病院の中で、皆で揃って、ジグソーをしていましたね。
Dykens先生の論文の結論のところは、自閉症の患者さんでもみられるジグソーパズルの能力とPWSのそれとを関連させて、それに作用している遺伝子を探求するという主旨のようです。
PWS単体の研究では予算も付きにくいので、自閉症の遺伝子探索という関連付けを行う事で、研究対象を広げる戦略の一つなのかもしれませんね。

CONCLUSIONS: Findings are discussed in relation to splinter skills in autism, and to cases with autism and chromosome 15 anomalies that include the Prader-Willi region.
論文の一部引用

そこから類推すると、僕への先生の回答は、ジグソーの能力の高い子供たちも居るけれど、能力のそこだけに着目しないでくださいね、という主旨と理解すれば良いのかもしれません。
最近のIPWSOでのDykens先生の研究発表を読むと、この先生が良いなと感じるのは、PWSの良い面を、こまごまとあげておられるところですね。確かに、赤ちゃんや、ペットへのお世話の感じは、そうですね。

correlates of behavioral problems and in persons with prader willi syndrome
http://www.amspw.org/spw/investigacion/6thconromania/VIConfRO_05.pdf

we describe two understudied areas of strength in pws : a desire to physically care-take others, including pets; and remarkable skills with jigsaw puzzles and word search puzzles that seem based primarily on shape recognition and memory.
we compare these strengths to other groups with and without disabillities, and show how they relate to age, genetic subtypes, and specific neuropeptides(e.g., oxytocin , ghrelin)