芝高康造展を観る

僕の版画の先生の芝高康造さんの個展を観に行く。先生としばらくぶりにお話する。遅れて妻子も到着。夕方5時からパーティー
作品は、バラや果物を銅版の上に置いて、松脂の粉をまいて定着させて腐食したアクアチントの銅版画。2度刷りなので、微妙なズレが美しく、版画であるが一枚一枚がオリジナルプリントとなっている。現実の物体の痕跡はとてもリアルであるが、でもそうであることの解説(メタな視点とも言える)が無ければ、とても幻想的なランドスケープにも見えてきて、目の前の現実の物体のサイズや、それに対する既製のイメージと、遠く離れたイメージとが混合し、そしてそれらの双方に働きかけるメタな視点がメタでありながら、先験的な形ではなく、視覚的な経験と共に現われるような、複雑な働きかけがそこにはあった。
展示は画廊オーナーの小谷さんの考えで構成されたとの事で、作品と画廊の空間とのバランスがとても良い感触である。
バブル期以前、評論家の安黒正流氏が読売新聞社の美術記者であった頃は、丁寧な画廊等の取材に基づいて、毎週あちこちで開かれる、新しいアーティスト達の斬新な試みが、メディアで報道されて、それが楽しみであり、アートの支えにもなっていたと感じるが、すっかりそのような機能を新聞社は放棄してしまったのか、現在は無残な状況である。
今日見てきた、芝高さんの個展を含む、充実したアートを、丁寧な批評を加えて、アートを活性化する試みをしていかなければ、と切に感じる。

芝高康造展 「痕」
会場:シェ・ドゥーヴル(大阪市西区阿波座1-9-12)
2006.9.4〜9.30(12:00〜24:00)