松田彰展を見る

信濃橋画廊で知り合った作家の松田彰さんの個展。案内状頂いていたが今日が最終日なので、お伺いしてみた。会場で久し振りにお会いする。
継続は力なりを実感させる、ユニークな作品群である。何年も繰り返し繰り返し同じ方法で作品を作り続けるモチベーションの高さ。鉛筆で紙を塗りつぶし、それを複数枚重ねられている。そこに白い紙を削られた線と、さらに深く下地のベニアまで切り込まれた、黒の線とが、クロスしている。以前の構成では、下地のベニアは絵画を支える土台のように見えないものであったが、今回の作品では、地の部分として露出して、さらに複雑な構成となっている。そのような地味な、根拠もなく自らに果たした絶望的とも言える、根気の要る作業(ベニア一枚を鉛筆でびっしり塗りつぶす姿を想像すると、気が遠くなるが、それが無数に展示されていて、このような試みを何年も繰り返しているのだ)によって醸し出されるイメージから、突然、文字のような、句読点のようなサインが浮遊し、混在している。それらが、重苦しい根気の要る塗りつぶしの作業を一瞬にして、概念化して、笑っているかのように存在している。閉塞的な空間から外部に向けてコミュニケーションの回路が築きあげられ始めたようなのだ。だがしかし、それらの句読点もまた、等しく破られた紙によって作られた物質の一つであることからは逃れられず、再び、重苦しい塗りつぶしの、閉鎖的な精神空間に押し戻されてしまうようなのだ。
松田彰さんの個展は、ニューヨークの画廊でも開催されるそうです。

Akira Matsuda: ,CHACOAL
CAELUM GALLERY
October17-November4,2006
http://www.caelumgallery.com/