北加賀屋周辺の展示
仕事の打合せで北加賀屋へ出たので、帰路、周辺で開催されている大阪カンヴァスの展示を見てきました。広報をあまりされていないのか、3箇所廻ったいずれも土曜の昼に観客は僕一人と閑散としていました。作品自体はどれもユニークなものでしたから、残念な感じがします。
大阪カンヴァス
http://osaka-canvas.jp/
最初に、名村造船所跡地クリエイティブセンター大阪へ行き“床書キ原寸” 後藤靖香を見ました。
4階にある広大な原寸場が会場。ここは造船所跡地なので、まだ当時の名残の部分がたくさん残っていて、原寸場もその一つの様子。建築の場合も、鉄骨のフレーム制作の際に原寸図を床に描いてフィルム等に写して、それを型に作るという工程がありますが、最近はコンピューターと連動して、加工する部分があり、最近はどうなっているのか、鉄骨の物件あまりやってないので、分りませんが、でも物つくりのスピード感のある痕跡がとても美しく懐かしい雰囲気がありました。
作者の後藤靖香さんは、おそらくそのテイストに魅せられて、原寸図を描く職人さんを2枚の大きなキャンバス地に描いたのでしょうね。のめり込むようにして描く職人さんの姿は、デフォルメされて描かれているけれど、作者にもの作りに対する敬意が感じられ、良いイメージがありました。
それから少し歩いて、空き地で公開制作されている“空の器(そらのうつわ からのうつわ)” 5020を見ました。
作家の5020さんは不在でしたが、会場に居たスタッフさんが詳しく解説してくださいました。
元々大工さんがアートに興味を持ちこの地域でギャラリーを運営されているというユニークな経歴の方。そして今回がアート作品として初めてのものであるらしい。
東北の震災ボランティアを2ヶ月ほどされた経験から、この作品のコンセプトは生まれてきたらしい。
作品の大部分はFRPを現地で型枠を組んで、そこにガラス繊維と樹脂を塗って、構成されている半透明の美しいもの。それ自体で自立し、床も同様にFRPで作り、下からライトアップされるらしい。上から見ると感嘆符のような、細長い前方後円墳のような形をしていて、そのうちピリオド状のところはコンクリートで出来ていて、少し地面から下がっている。FRPのところから降りて行き、上空を見上げると、周囲から空だけが切り取られ、そこが震災の地の空と繋がっていることを感じるテーマであるらしい。やや強引な論理とも感じるけれど、震災の地で感じられた空虚なイメージは、おそらくこの方だけでなく、多くの人の心の中に、深く染み込んでいるだろうし、未完のこの空間装置のようなものが、どんな姿を見せてくれるのか、とても興味深いですね。
それから少し歩いて、“明るい/暗い家 -大阪-” 佐藤隼を見ました。こちらは個人住宅の内部が会場になっていました。
蓄光塗料が使われていて、中に入ると係りの方が扉や窓を閉めて、そして自分で電気のスイッチを切ってくださいと言われるので、そうすると、壁に乱雑にまかれたような蓄光塗料が光りだすという仕掛け。2階は小さいキャンバスに塗られていて、1階に較べると整然とした構成。
少し前に国立国際美術館で見た、木藤純子さんの作品にも確か蓄光塗料が使われていた事を思い出した。もし蓄光塗料の塗り方が、乱雑な塗り方でなく、壁床天井全てに、均一に塗られていたら、どんな様相であるのかと空想。