久下典子展/シェ・ドゥーブル
午後、知人の小谷廣代さんが経営するカフェ&ギャラリーのシェ・ドゥーブルへ行き、久下典子展を観ました。
明るく多彩な色調のタブローの画面に薄く浮かび上がるウサギのキャラクターの顔のイメージ。会場に置かれていた過去の作品ファイルの作品は、モノクロ的な、もっと複雑で顔的イメージが感じられはするけれど、周囲に解けているような印象があり、今回の展示作品は、かなりイメージが顔的キャラクターの方へ偏らせたような印象があります。
僕の物作りの際のテーマとしている「顔/カオス」的世界のイメージも、少し近いものがありますが、でも直接的な顔的表現という訳ではなく、分母分子の関係でもなく、フォークロアな都市や建築が自然と備えている属性のようなものであるし、それを現代都市や建築は少し失ってしまったのではと感じている。
自然と備えているものを、アートの作品世界に人為的に人工的に作り出すことはとても難しい作業ですが、でもフォークロアな都市や建築も、あくまで人間によって作り出されたものですし、不可能な事ではない。おそらくそこには繰り返し作り続けることで得られる、その人なりの方法やスキルが要請されると思うし、とても時間のかかる、気の長い作業なのであろうとも思う。
僕はいつも、高校生の頃の体育祭のバックに描いた、イースター島のモアイ群像のことを思い出す。ランドスケープの中に微妙な笑みを浮かべながら並ぶモアイ群像は、僕の「顔/カオス」的世界のイメージの原点でもあるのだけれど、イースター島の人々が、長い歴史の果てに、それを作り続けることがあまりにも強く目的化された為に、過剰となり環境破壊の末に滅んでしまったという悲しい歴史の事を。そのような過剰さもまた僕の好きなイメージでもあるけれど。