鹿男あをによし
とても複雑な設定のドラマですが、ランドスケープの中で癒されることが身近な事として映像化されるのは、とても素晴らしいと感じる。奈良公園は本当に不思議な公園というのか世界中捜しても、これだけの身近な場所で大型動物に、ぶらりと立ち寄るだけで触れ合えるようなところは無いと思う。原作者のランドスケープでの癒し体験が強く反映されているように感じる。
個人的にも奈良での仕事で、役所の自然公園法上の法律解釈の誤りで、長期間戦わざるを得ないという面倒な経験が有り、奈良県庁での議論で疲れ果てて、まっすぐに駅には向かえないで、奈良公園の中を歩きながら頭を冷やしていた時の事。夕暮れで観光客も居ない芝生の公園に、ふと、目の前に鹿の群れに遭遇して、背後の歴史的な建造物と相まって、その不思議な光景に、それまでのトラブルのことなど消えてしまい、呆然と立ち尽くした。いったいいつの頃から、こんな不思議な光景が続いているんだろうと。僕も鹿男になりかけたのかもしれないね。
奈良公園の鹿のこと見るたびに思い出すエピソード再録。
奈良公園の鹿もこの維新のとき、絶滅寸前まで追い詰められたことがあった。古い習慣、古い権威を破壊しようとしたのが、維新の一面でもあったので、春日大社の神鹿もその対象者とされたのである。神鹿は春日大社の西につくられた柵内におしこめられて虐待され、七百匹をこえたという鹿が一時は三十八匹までへったといわれている。(中略)数年して、この木の柵がくさり出すと、鹿は競って脱出した。
日本の自然公園―自然保護と風景保護 (1981年) (相模選書)
- 作者: 田中正大
- 出版社/メーカー: 相模書房
- 発売日: 1981/10
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