「奇跡の生還に導く声〜“守護天使”の正体は?〜」

昨晩、偶然途中から拝見。とても大事なことを示唆している話だったので、詳しく書いてみる。

NHK Eテレ 地球ドラマチック「奇跡の生還に導く声〜“守護天使”の正体は?〜」
http://www4.nhk.or.jp/dramatic/x/2013-05-12/31/9419/

生死を分けるような極限状況で生還を果たした人たちが、意識を失うような状態で体験した、奇跡のような導く声や姿のことをサードマンと呼ぶらしい。超常現象はあまり興味が無い(少しはある)のでそこへは立ち入らないけれど、番組では脳科学の専門家たちの分析がなされていて、その話からさまざまな示唆を受けました。
極限状況でエネルギーも失われた状態になると、人体は不必要な部位を停止して生存に必要な部位だけを働かせようとするメカニズムがあるらしい。特に大きなエネルギーを費やす脳の場合、最初に後頭部にある頭頂葉が活動低下するらしい。頭頂葉は自己の存在に関る認知を司る部位であり、自己感覚が混乱し、外界で起きている現象と、脳内で認知している現象とが乖離し始め、その乖離の辻褄を脳が合わせようとして、現実には存在しないサードマンのようなものを作り出すのではないかと。
そのことを脳科学的に証明することは困難なようですが、番組を見ていて、「極限状況でエネルギーも失われた状態になると、人体は不必要な部位を停止して生存に必要な部位だけを働かせようとするメカニズムがある」というくだりが、アーチャンのような先天的に脳に障害を持って生まれてきた子供たちや、発達障害の子供たちのほとんどが右脳で判断しているという最新の研究と関連してくると感じました。
ブログに関連研究の記録

発達障害、脳の活動場所に違い 三邉金大教授ら確認」http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20120316/brain

おそらくこの子達は胎児の時期に、生き延びる為に脳の機能のうち、生存に不可欠な部位を優先した結果、右脳優位な脳活動となっているのではないか。
アーチャンが小学校3年から約3年間観ていただいた、京都大学こころの未来研究センターさんでの療育(正高信男先生のご研究)の最初の頃に、左右脳の視覚の変異の有無を「線分二等分課題」という簡易な方法で調べていただいたことがあり、その結果でもアーチャンの右脳の視覚に偏りは見られなかったし。

当時の記録
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20080112/ryouiku

番組の「頭頂葉は自己の存在に関る認知を司る部位であり、自己感覚が混乱し、外界で起きている現象と、脳内で認知している現象とが乖離し始め、その乖離の辻褄を脳が合わせようとして、現実には存在しないサードマンのようなものを作り出すのではないか」というくだりは、アールブリュットのアートとの関連も連想させます。
頭頂葉には、観察者中心座標系を司る部位があるとする研究もあり、そこに変異があると、アーチャンたちのような描画における構成失効(奥行きや焦点のある絵画や、重なり図が描けない等)に結びついているのではないか。
観察者中心座標系に変異があって、自己感覚が常時混乱しているとすれば、この子たちは、おそらくとても不安な精神状態であるだろうし、心の安定を求めているに違いない。
自閉症の動物学者であるテンプル・グランディン(Temple Grandin)さんが、屠殺場で牛を安心させる装置にヒントを得て、自身を落ち着かせる装置として開発したハグマシーンは、自己感覚を補助することで心の安定に役立っているのはないかと思われる。

京都国立近代美術館で観た「生存のエシックス」展に展示されていた、テンプル・グランディンさん考案の自閉症の人の為のハグ・マシンほかの記録。
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20100731/art

でもアールブリュット的な表現が本当に、この子たちの心の安定に結び付いているんだろうか、という疑念はずっとあります。アールブリュット的な表現がこの子たちにとってのサードマン的な役割を演じているのか否か、そこは探求してみたい。