今年の仕事も一段落、忘年会等で仲間と会っても、話題は最近の構造偽装問題について、議論してしまう。これは論外の事件だし、特にコメントもないけれど、メディアの取り上げ方や、専門家の意見とか読んでいて何となく違和感もある。少し前の読売新聞夕刊に、ある建築系の大学教授が、現在のこのような状況に対して、昔の建築家の真摯な取り組み姿勢として、フランク・ロイド・ライトを取り上げ、彼の帝国ホテルやグッゲンハイムミュージアム落水荘など、ユニークな構造とデザインの融合について論じていた。僕もライトは敬愛する建築家だし、全体的な主張には同意する。帝国ホテルは竣工の日に関東大震災があり、周囲が灰燼と化した時、ビクともせず、緊急避難場所として活用されたことで、一名を馳せたホテルだから、これも分る。でも、落水荘はどうなんだろうと思う。この世界で最も有名な住宅は、実はライトがかなり無理なデザインをしたため、構造上の欠陥があり、自重に耐えられないものとなっていた。最近、ようやく構造改修されて、安全な状態になっている。
そのような事実を事実として伝える努力もまた必要だと思う。落水荘のクライアントのカウフマンさんが偉かったなと思うのは、構造上の欠陥があっても、ライトのデザインのプロセス自体は高く評価して、何とかこれを残し、後世に伝えた事だろう。
たとえどんな権威やメジャーな存在であったとしても、基本的な部分から見つめ直すこと、そのような視線を失ってブラックボックス化することの危険性があり、そこから思考が自由になる為に専門家と協働する意味があると思う。

http://www.wpconline.org/fallingwater/restoration/index.html
落水荘を管理するWESTERN PENNSYLVANIA CONSERVANCY'SのHPより