「Prader-Willi症候群-臨床からケアまで」(診断と治療社)を読む。

共同執筆者の大野耕策先生にメールで質問させていただいたところ、御返事がありました。転載許諾も頂きましたので、転載します。(プライバシーに関わる部分は許可を得て修正しました)

私はこれまでプラダーウィリー症候群を主たる研究テーマとして来たわけではありません。しかし、私が赤ちゃんの時に診たプラダーウィリー症候群の子が成人になり、ご家族とお話しする中で、これはなかなか大変な病気であると理解し、何とかしなくてはと思っています。
平成14-15年度、厚生労働科学研究費補助金・障害保健福祉総合研究事業「知的障害のある人への適正な医療の提供に関する研究」の主任研究者として、知的障害の原因となった疾患の生涯にわたる健康問題を明らかにすることも課題の1つにしています。ダウン症候群などとともにプラダー・ウィリー症候群の生涯にわたる健康問題の調査も行っております。「Prader-Willi症候群-臨床からケアまで」(診断と治療社)は主に外国の論文をまとめたものですが、日本のプラダー・ウィリー症候群の年長者の方も、異常な食欲に伴う行動によって糖尿病のコントロールが難しいと言う問題以外に、衝動的な行動によって社会的適応が悪い実態が明らかになっています。てつろうさんのお嬢さんのように、まだ小さいお子さんをお持ちの方には、将来が不安になるようなデーターで、あまり聞きたくない話と思いますが、現在この中間報告を作成しています。

てつろうさんのホームページにありますグレリン、ネクディン、さらにレプチン、ニューロペプチドY,オレキシンなど食欲や行動と関係する分子と食欲や行動との関係を明らかにして治療法を開発する努力とともに、プラダー・ウィリー症候群の衝動的行動の背景にある認知神経科学的な異常を明らかにし、適応能力を上げるのに有効な療育・教育的アプローチを開発する必要もあると思っています。

現時点で言えることは[]プラダー・ウィリー症候群[]のある子は「しゃべる割には、聴覚言語能力が悪い」
可能性があると思います。この点を考えた接し方が必要と思います。

てつろうさんのお嬢さんの「行動の問題」の記載を見せていただきましたが、ご家族のちょっとした一言が、今後、認知神経科学的な異常を捉えるヒントになると思います。
今後、プラダー・ウィリー症候群について、研究のネットワークが広がることと、教育・福祉関係者を含む周囲の人にこの病気の特徴を理解してもらうことが大切と思います。てつろうさんのホームページの役割も大きいと思います。是非さらに充実させて下さい。そして、お嬢さんが成人になる頃には、全てのプラダー・ウィリー症候群のある子のQOLが向上するよう、みんなで努力しましょう。
2003年12月17日
大野耕策
鳥取大学・医学部・脳幹性疾患研究施設・脳神経小児科部門

ありがとうございました。「しゃべる割には、聴覚言語能力が悪い」可能性があるという部分は、意外でした。娘の反応見ていて、こちらからの問い掛けには比較的よく理解できているように感じていて、ただ喋るのは遅いんだというふうに思っていましたから、もう少し、その点注意してみようと思います。