奥田右一展を見る

同じ信濃橋画廊エプロンでの奥田右一さんの個展を見る。奥田さんは不在だった。
1986年ですから、もう20年も前に、信濃橋画廊5で、サマーフェスティバル展に奥田さんと一緒に出展した頃のことを思い出す。紙に絵の具を塗り、ぐしゃぐしゃに折りたたんで、また開いて、また絵の具を塗り、という工程を繰り返していくと、紙はボロボロになり、表面に無数のクラックが入る、所謂スクラッチという技法で制作されていた。
今回の作品は、紙の表面をポーラス状に壊していくという最近の作業の延長上のような、小品群であった。表層的な混乱と、同じ作業が繰り返されることで現われる明確な意思のようなものが、混在している。私達が日常において、正気を保っていられるのは、このようなことの繰り返しがあるからなのかもしれないなと、感じてしまう。