Utopia:The Genius of Emily Kame Kngwarreye

午後、国立国際美術館にて、エミリー・ウングワレー展を観る。
3時から、岡登志子さん(ダンス)と内橋和久さん(音楽)によるコンテンポラリー・ダンスパフォーマンス<<即興デュオ>>が開催されるので、先にそれを観てから展覧会を廻りました。
エミリー・ウングワレーさんの事はまったく知らない作家さんだったので、初めて見る作品群はとても興味深く、点描などで埋め尽くされる作品に強い親近感を抱きました。オーストラリアのアボリジニのウングワレーさんは、ずつと儀礼のためのボディ・ペインティングや砂絵を描いていたそうですが、80歳を過ぎる頃からキャンバスに絵画を描き始めたらしく、死の2週間前くらいまで、制作し続けたという、そのエネルギーに圧倒されました。
解説を読むと、名前のカーメというのは、ヤムイモの種を表す言葉らしく(日本語タイトルの名前には、そのカーメの表示が無く、英語のタイトルには表示されていますが、その理由が僕にはよく分りませんが)、描かれる絵画にも何度も表れる、種などの作物のイメージと名前=自己とが同一化しているところ、ノンヒューマン環境論的な、ものや動物と同化してしまうことへの不安と喜び感の混じったようなイメージに引き込まれていきます。
6連とか3連でキャンバスを並べる作品の、その隙間のところが、見るものとの間合いや、ちょっとした呼吸のような、笑いを誘うような仕掛けになっているように感じます。会場に展示されているボディペイントのところの写真見ていると、ボディペイントしながら、友達同士での賑やかな会話が聞こえてきそうな雰囲気があり、そのままの雰囲気が、タブローの、連作のつながりのところに感じられます。

展示は、キャンバスがそのまま壁に取り付けられていて、かなり近づいて見ることができるようになっていて、触りたくなるような、おそらくこれを見た子ども達の中には、触ってしまうのではないかなと思うくらい、オープンな展示になっています。ウングワレーさんの制作風景の映像みていると、床というのか土の上というのか、キャンバスを広げて、描いていて、その雰囲気を見ていて、レプリカでいいから、床に展示して、座ったり、触ったり出来る展示のところもあれば、さらに良かったのではないかなと思いました。

エミリー・ウングワレー展
Utopia:The Genius of Emily Kame Kngwarreye
http://www.emily2008.jp/
http://www.nmao.go.jp/japanese/home.html

イベントの岡登志子さん(ダンス)と内橋和久さん(音楽)によるコンテンポラリー・ダンスパフォーマンスhttp://www.emily2008.jp/new/index.php?e=12も、この展覧会のイメージを意識してコンセプト作られたのか、とても素晴らしく、1時間程のライブに見入ってしまいました。
ただ、会場が狭く、また最前部の人は皆さん床に直接座っていたのですが、ほとんどの人が立見で、後ろ側からは見えないので、仕方なく、上の階のホールに戻って、俯瞰的に見るしかなく、その点少し残念でした。確かにギャラリーの靴で汚れた床にそのまま座るのは抵抗あるかもしれませんが、ウングワレーさんの世界を見て、共感して来られたのなら、こんな時くらいは座ってみても良いのではと思いましたが、後は、主催者側で少しそのような誘導が可能な仕掛けがあっても良いかなと。
ライブを聞きながら、子供の頃、雨が傘やカッパに当たる時のパラパラする音が好きで、いつも傘を持ち歩いていた頃の記憶が蘇ってきました。始まりも無く、終わりも無いような、なかなかコミュニケーション取り難い感じのライブでしたが、雨や風のような自然現象に感じるものも、やはりそんなふうに、予期しないことの連続でもあるし、通り雨のような印象が残りました。