記憶の棲殻(スミカ)

淀屋橋の芝川ビルへ行き、呉夏枝(Haji Oh)さんの「記憶の棲殻(スミカ)」展を観ました。
会場の芝川ビルは1927年建設のレトロな建物。年代的にはアールデコ前後。先日音遊びの会さんのワークショップでお伺いした神戸の生糸検査所も同じ年代のもの。この年代の建築はとても温かな印象。
芝川ビルは昔、芝蘭社家政学園という花嫁学校があったらしく、アーティストが洋裁教室をイメージされるのか、糸や布を使った展覧会が記憶に残っています。今日の展示は、一次元の線としての糸が編まれて二次元の布のイメージとなり、吊られて柱のような表現となったり、樹脂によって固められオブジェ化して自立している。

http://blog.hajioh.com/
呉夏枝(Haji Oh)さんのblog

拝見した後、この展覧会期間にオープンされる、はらはち食堂でお茶とお菓子を頂きました。

この文章を書きながら、僕の好きな中原中也の詞を思い出した。空間次数の連鎖のイメージ。

中原中也の詩は著作権きれているので、「青空文庫」で読めますね。
僕はその中の「むなしさ」という詩が好きですね。海岸線という一次元と2次元の中間体から、薔薇という二次元平面の花弁を集合させてできる3次元の立体に移り、最後に「偏菱形(へんりようけい)=聚接面(しゆうせつめん)そも」という不思議な3次元と4次元立体の中間のような表現で終わる、空間の循環詩とも言える。

在りし日の歌
作品名読み: ありしひのうた
著者名: 中原 中也 
http://www.aozora.gr.jp/cards/000026/card219.html
青空文庫より
http://www.aozora.gr.jp/index.html

むなしさ

臘祭(らふさい)の夜の 巷(ちまた)に堕(お)ちて
 心臓はも 条網に絡(から)み
脂(あぶら)ぎる 胸乳(むなち)も露(あら)は
 よすがなき われは戯女(たはれめ)

せつなきに 泣きも得せずて
 この日頃 闇を孕(はら)めり
遐(とほ)き空 線条に鳴る
 海峡岸 冬の暁風

白薔薇(しろばら)の 造化の花瓣(くわべん)
 凍(い)てつきて 心もあらず
明けき日の 乙女の集(つど)ひ
 それらみな ふるのわが友

偏菱形(へんりようけい)=聚接面(しゆうせつめん)そも
 胡弓の音 つづきてきこゆ