築港ARC月例トークサロン

午後7時からのトークサロンに参加しました。出演は大西景子さん(SODA design research代表/ neomuseumチーフキュレーター)
会場は30名を超える参加者とサポートスタッフさんとで満員、密度の濃いお話でしたが、予定時間をかなりオーバーしても築港ARCさんのオフィスが会場なので、10時ごろまでそのままオープンされていました。
時系列にそのまま記録すると
受付でまず最初のアンケート用紙配られ、「生活の中で学びを感じる時」について書き込み、部屋の中央の掲示板にテープで貼り付けました。
もろもろ挨拶、その後アイスブレイク的な感じで、二歳児向きのほぐし体操と大笑いプレイ。
モニターに今日の会場をディスプレイしていくプロセスが映し出され、構成の意図など解説(人数が30名と多かったので、ワークショップ形式ではなく、少しセミナー的なかたちにされた様子)
リアルタイムドキュメンテーションの解説(ワークショップの様子を同時進行で撮影して行き、最後の振り返りの時に観る。その意図を聞くだけで撮られる側の反応もまた変化する、など)
そんな感じで今日のセミナーのようなワークショップのようなお話の進め方の解説と、ドキュメントとが同時進行で起きていきました。繰り返し出てきた「メタ認知」的なものの観方を誘発するような仕掛け、ドキュメントとメタ認知がうまく混じり合ったような進行と感じました。
ここから大西さんが関わられたワークショップやプロジェクトと、いろいろな先駆的な試みをされている方とをモニター映像で紹介。タイトルと概略のみメモしますが、とても参考になりました。

子供向きのプログラムソフト「スクラッチ」(小さなパソコンのクリケットでプログラムすると、それに接続された様々なオブジェクトが動く。フリーソフト

メタ認知の解説(会場へ、メタ認知って何ですか?と質問、参加者に回答させやりとり。編集の目でドキュメントを観ること)

大西さんが独立前に所属されていた、CAMP(Children's Art Museum & Park)での仕事について(ワークショップの開発・普及。パッケージにしてキット販売)
ワークショップのプログラム作りしていく中で、「全ての活動に意味付けをしていく」というお話が印象に残ります。

受付で最初に配られた「学び」のアンケートの主旨解説(貼りだす事で可視化、共有化、シェアする)

ワークショップとは何か?(何がワークショップで何がワークショップではないか分からなくなってきている)
ワークショップはすぐに成果は出ないし、評価をいかにするのか?→フォーマティブリサーチ(例えば、車の製造過程:試作→リサーチ→完成 ワークショップも同じではないか)
ワークショップ自体の評価は難しいが、ワークショップの作り方自体の評価は可能ではないか(例として、セサミストリートの作り方解説。子供達に試したい番組とリストラクター=邪魔をする番組をニ台のモニターで同時に流して、注視する子供の視線を5秒毎に記録など)(クッキーモンスターと覚えて欲しい文字=FUNとの位置関係を視線記録にてリサーチし、文字をモンスターの口元へ移動、修正)

大西さんが手掛けたプログラム「ふくのりゆう」→子供たちが服の概念を学び、考え直すワークショップ。3日に分けて実施(司会者さんが質疑 Q:服のアクティビティの伝えたい内容は何なのか?服の上位コンセプト想定? A:気付きのきっかけ作りとしてのワークショップ意図した)
二人の為のアイスクリーム=二人が楽しくなる食べ方を考えよう→子供たちにフォーマティブリサーチ自体を伝えるワークショツプ。

Eating-Designer のマライエ フォーゲルサンゲ(Marije Vogelzang)さんのプロジェクト紹介。食行動の異常のあるprader-willi症候群の娘を持つ僕は、この方の紹介のところにやはり一番反応してしまいました。セミナー全体も良かったし、参加して良かった。どこにどんなアドバイスやアイデアがあるか誰にも分からないし、出向いていろいろな方のお話を先入観なく聞いてみる事の大事さ再確認ですね。
・肥満児の為の食事プログラム:色がとてもカラフル。食べものにある様々な意味やイメージを楽しいものとして伝える工夫。
・テーブルの他の人とシェアする食器:二枚に分割される皿、自分には長すぎて使えないが、目の前の人には食べさせてあげる事の出来る極端に長いフォークなど
・テーブルクロスがそのまま持ち上がり、服を隠すスクリーンとなる:服を隠す=階層などが無くなりフラットな関係が生まれる
・野菜嫌いな子どもの為のプログラム:歯だけを使って野菜のジュエリーを作ろう→かじって形作りしているうちに、自然と食べてしまう感じで。

ここで休憩、第二部は質疑応答。質疑のある人は配られた紙に書き込んで、掲示板に貼り付けておき、司会者さんが読み上げて、大西さんとディスカッション
ここで繰り返しでてきたのが、まずモデルを考えるという大西さんの考え方。

いろいろなモデル
しつらえ+よそおい+ふるまい
イメージ→手で作る→それで遊ぶ→シェアする、意見交換する→振り返り
お茶会モデル:飛び石(身体感覚)→掛け軸や花(観るための時間)→濃茶→お菓子→薄茶
食事モデル:前菜(わくわく感)→メイン→エスプレッソ(振り返り)

参加者さんから、モデルや手掛かり的なものが無い場合に、自分自身の思いを込めること、について議論があり、大西さんは、自分で作るよりも、他人の面白い考えを伝えたい考え。
独立後の新しい展開。
今までのワークショップはデザインされたもの、今後は現場で何が起きるか参加者主役のものに。問題があると、その周囲で寄道し回り道して考える。ワザワザ楽しくしていく手法。ワークショップの後で、何かをお持ち帰り感を感じるもの考えている。
参加者さんから、過去のプログラムに対して、子供に対して親切すぎないか?遠まわし過ぎないか?と厳しい意見も。
何が良いのか模索中、子供達がメタな視点で、再認識できることイメージしているとのお話。
いろいろ見直していき、ワークショップという名称を使わないものも考えたいとの事。
アートは主体的な要求、ワークショップは問題解決もしくは気付き。
最後に、振り返りとして、リアルタイムドキュメンテーション、会場の写真上映して一旦終了。
僕の質疑は、ワークショップを具体的に実践されている今日の参加者さんとは異なり、明らかに場違いな印象のもので、司会者さんも困惑されたと思います。でも、もうそんなの振り切って、思ったこと感じた事していくしかないとも思っていますね。個人的な、娘とのアートセラピー的なかかわりのところで、どのようなプログラムが作っていけるのか、という関心から参加していましたので、Eating-Designer のマライエ フォーゲルサンゲさんの事など、終了後、詳しくお聞きできて良かったです。いろいろとプログラムつくりをしていて、prader-willi症候群児にたいする食行動の異常や行動面、精神面の問題に関しての、アートセラピー的なかかわり方の、モデルが見当たらない現状で、果たして我家の方法が、これで良いのか、確認するすべも無かったので、「制限を苦しみではなく、楽しみに変える方法」等、アドバイスいただいたことはありがたいですね。感謝です。
大西さんがワークショップのプログラムを作る際に「全ての活動に意味付けをしていく」というお話が今後の我家にとっての手掛かりになりそうです。
今日のテーマと感じた「メタ認知や気付き」のようなものが起きにくい、もしくは困難なハンディキャップのある子供達を思うとき、そのような状況にこそ、ピュア・アートのちからが要請されていると信じたい。

築港ARC月例トークサロン「分野を超える“ワークショップ”の取り扱い方」
出演:大西景子(SODA design research代表/ neomuseumチーフキュレーター)
ファシリテーター:蛇谷りえ(築港ARCサブディレクター/アーティスト)アサダワタル(築港ARCチーフディレクター/大和川レコード)
日時:6月26日(金) 19:00〜21:00
築港ARC
http://www.webarc.jp/2009/06/02145055.php