狭間の旅人 津田直 -作品集「漕」より-

午後、国立国際美術館に寄ってからgrafでギャラリー見て、お茶休憩して帰るというパターン。まったく知らないアーティストさんでした。
琵琶湖のランドスケープをテーマにした展示は、写真家の津田直さんと、華道家の片桐功敦さんとのコラボレーションで、直接的なイメージとして琵琶湖に自生する葦が展示室に花として、窓枠のような材料として、さまざまな形で置かれていました。写真の方は写真というよりも、アブストラクトな印象でした。中央の展示小屋の内部は砂利が敷き詰められ、枯山水の庭のような設らいですが、展示室の上がり框のところで靴を脱いで飛び石を辿ると掛け軸に向かえるような仕掛けとなっていて、内部のような外部のような、展示室自体も入れ子になっているので、とても複雑な空間の仕組みとなっていました。身体の動きを含めたあらゆる感覚を稼動させての体験は、見る側からすると、相当に不自由なものであるが、時計周りの軸を意識したような、心地の良い空間が作られている。琵琶湖の良さは現地で一番よく伝わるように、ここでの展示も、琵琶湖をテーマにしながら、展示室での、ここでの体験の唯一性を強く意識されている印象。
外周部の、水盤のような、湖面のような黒い短い立ち上がりのエッジをもった水の表現を見ていて、僕は敬愛する彫刻家の福岡道雄さんの湖面のさざなみの風景彫刻の作品群を思い出しました。福岡さんの風景彫刻の台座は湖面のさざなみを支えるものであり、かつそれ自体が表現世界として露出していて、なおかつブロンズや石のような重厚さを持った素材ではなくて、軽量なポリエチレンで構成されていて、均質な素材によって、限りなく多様な世界が表出している。
展示室での、水盤のような、湖面のような黒い短い立ち上がりのエッジをもった水の表現は、ここでの体験の、今ここ性に、強いクサビを打ち、遠い世界へ思いを飛ばす作用をイメージされたのであろうか?そんな空想をした。

狭間の旅人 津田直 -作品集「漕」より-
http://www.graf-d3.com/gm/tsudanao/index.html
grafのHPより