液晶絵画 still/motion

今日は国際博物館の日で入館料無料だったので、観てきました。無料という事もあり会場は満員でした。
still/motionというサブタイトルのとおりに、微妙に動く画面の作品が多く、ゆっくり見ないと作品の全体像が掴めない感じでした。液晶のパネルを何枚も使って構成している作品見ていると、家電量販店でモニター見ているような気分になってきて、照明の暗さと、重い繰り返しのBGMとが相まって、やはり長時間見つめるのは厳しいと感じました。
still/motionを自分なりのテーマに置き換えると例えば「顔/カオス」のようになると感じる。そのイメージに展示作品の中で一番近いものは、ブライアン・イーノさんの「ミステイクン・メモリーズ・オブ・ミディーヴァル・マンハッタン」と「サーズデイ・アフタヌーン」と感じた。

会場ではこれが二つの作品を並べているとは思わなかったが、中央二枚に登場する女性と両サイドのパネルの夕暮れのなんでもない光景とが微妙にシンクロしていて、水の中からスローモーションで浮かんでくるような女性の唇が夕焼けの雲の筋のように見えたり、くゆらすタバコの煙が飛び越えて雲の中へ消えていくように感じられたりする。また雲の中に顔のような形象が見え隠れするようにも感じるが、それは偶然なのか意図して選んだのかは分らない。展示場の床が板張りで、入退場する人の靴の音で、BGMがほとんどかき消されていたが、それも作品の一部であるかのようだ。
千住博さんの「水の森」はとても美しく、繊細な表現。液晶パネルを屏風仕立てにして、その折れ曲がりのところの物質感を露出させているところも良かった。
http://www.pref.mie.jp/BIJUTSU/HP/event/catalogue/ekisho/senju_new_1.jpg
伝統的な屏風は六曲で構成されることが多いようだが、六曲でつくると中央が凹面となり、木口が出ないので奥行きがでて中央に描かれる主題を見る時に落ち着くのが理由ではないかと個人的に想像するけれど、千住博さんのこの作品では数えると八曲となっていて、中央が凸面になっていて、木口が強調されるようになっていて、また折れ点も数多く見える為に、おそらくそれは液晶パネルの物質感の強調、露出の演出ではないかなと推測した。
ミロスワフ・バウカさんの、床面に置かれた二枚のスクリーンへ向けて、拡大されたガスコンロの炎だけが、画面全体もグラグラしながら写されていた。
http://www.pref.mie.jp/BIJUTSU/HP/event/catalogue/ekisho/balka_04-b.jpg
離れてみた時は眼のような顔のようなカワイイ形に見えてきたけれど、真上から見ると、熱は無いが何となく輻射熱みたいなものを感じて、焼かれているような気持ちの悪いイメージを感じた。パンフレットには、ポーランドワルシャワ在住のアーティストさんで、やはり歴史的記憶、ナチスによる絶滅収容所などがテーマになっているようだ。

その他の作品も印象的なものが多かったけれど、やや既視感があり、液晶云々とは関係なく見えてくるはずの作者の思いがよく伝わらない感じがしました。

液晶絵画 still/motion
http://www.nmao.go.jp/japanese/home.html
国立国際美術館のHPより