この世界に僕たちが生きてること

NHKで10時から1時間半、筋ジストロフィーの双子の画家の御家族の生活、アートの製作場面などのドキュメント番組。心に響く内容でした。彼が描こうとしている世界がとてもよく分るし、生死の境界線上でぎりぎりまで粘って、なおかつユーモアを失わないで製作している姿は、涙無しでは見れませんでした。
弟さんは遺作の大作を描かれた後、4時間ほどで亡くなられたらしく、病院から帰ってきた時、彼のお姉さんは、まだ手に温もりがあったので、手を添えてその絵にサインをしてあげたそうです。
兄がその時描いていた、セミのぬけがらをモチーフにした絵画は、透明人間のような、顔の無い人が横たわって、周囲と重なり合い、とても不思議なイメージがありました。その顔の無い頭部は横を向いて水平になっていて、これは僕のイメージでは、直感的に意識と無意識の境界線を示す物と思うし、土の中(無意識的領域)から出てきたセミ(意識的領域)をつなぐ中間体として、セミの抜け殻をテーマに描いているんだろうと推測する。
病状が悪化して、ほとんど寝たきりとなりながら、なんとかパソコンを使って大作の下絵を描き、母のサポートを受けながら、キャンバスに転写するところまでで、番組は終りました。その絵は、9.11のテロから連想された、人間の悪意と善意の混ざり合った、とても困難なテーマのものでした(彼はテロの映像を見ながら、背後の空をとても美しいと感じ、自分が何故、そのように感じたのか、自分でも分らない、ということが製作のきっかけになったらしい)
地球をわしづかみにする巨大な手と、黒煙をあげるツインタワー、それらをつなげるように浮遊する極微の世界のDNAの二重螺旋が描かれる。
続編で完成した絵画を見てみたいですね。
NHKのきらっと生きるでも放送されたらしく、一部ダイジェストで内容が見れますね。

「ほほえみを描(えが)きつづける〜河合正嗣(かわい まさし)さん〜」
http://www.nhk.or.jp/kira/04program/04_226.html
NHKのHPより