サイエンスミステリー それは運命か奇跡か!?

他のPWSのお母さん達のblog日記で、今晩のこのTV番組紹介されていたので、家族で拝見しました。最近のメディアは捏造だなんだと言われていますが、やはり影響力は大きいですね、僕のblogにも、放送後アクセスたくさん来られていますね。
出演された外国の患者家族の方には心から感謝致します。番組内容には疑問点も多かったですが、こうやって多くの方にprader-willi症候群のこと知っていただけると、研究等の推進につながるかもしれません。
私の娘がprader-willi症候群と診断受けた時の当時の情報から想像していた病状は、今日出演されていた娘さんの症状に近かったように思います。でも、その後のいろいろな情報や、子育ての中で理解していった病状はかなり違ったものになりつつありますね。番組での紹介のされ方として、過食症が中心になっていましたが、個人的にはPWSの過食は精神症状の一部ではないか、そんな風に理解しつつありますね。
登場された娘さんは御祖母さんに引き取られて生活されているということで、番組中もしばしば、母との電話でのやり取りなど、崩壊した家庭の厳しい場面の描写があり、娘さんにはきついストレスが掛かっていることが伝わってきました。海外のPWSの患者家族団体の最新の情報でも、日常生活でのストレス要因や親しい家族等との別れなどが、精神症状発症の主な引き金ではないかと指摘されていましたし。番組中、晩御飯が野菜スープのみというのは、高齢の御祖母さんの、かなり行き当たりバッタリな食生活を行っている感じであり、様々な悪循環の連鎖の中から逃れられない環境にいる様子ですから、専門病院に入院されたとして、コントロール可能となるのか、難しいなと感じました。救いは娘さんの学校のお友達との交流がうまくいっている雰囲気で(からかうものも居て精神的に落ち込んでいましたが)、彼女達のサポートが、大きな変化を生じさせてくれるのではないかなと感じました。番組のリポートとしては、悪い面ばかり露出させていましたが、そのような救済の方向性について、取材を行うべきではないのかなと思いますね。

Psychiatric illness in adults with PWS
http://www.fpwr.org/node/338
FPWRのHPより

また、PWSの特殊な能力として紹介のあったジグソーパズルの能力ですが、番組にも出演されていたElisabeth Dykens先生が、PWSとジグソーパズルの能力について研究発表されたのは2002年で、その年の暮に僕は直接Elisabeth Dykens先生にメールを差し上げて、質問させていただきましたが、今日の番組の中での紹介のような、「健常者と比較して3倍も早く完成させる能力がある」というようなお話ではまったく無く、番組として、どのような研究成果を根拠にそう放送されたのか、質疑のメールは送ろうと思います。Elisabeth Dykens先生への質疑に対する回答を下記に紹介します。

2003年1月4日のメールより

Some but not all children with pws have advanced puzzle skills, similar to
if not better than those without difficulties. These skills are seem primarily in those with paternal deletions. Not every child shows interests
in puzzles, and we are trying out figure out why there is variability in
these skills.
Best of luck with your little girl, enjoy her!
Elisabeth Dykens

何人かのPWSはパズルの能力に秀でている。そして、その能力は 普通の子供より 良くはなくとも 少なくとも 普通の子供くらいある。
PWSの子供が皆そうという訳ではありません。
これらの技能は基本的に父方の遺伝子の欠如の子供におこるように思われます。
すべての子供がパズルに興味を見せるわけではなく、私達はどうしてこれらの技能にばらつきがあるのかを解明しようとしているところです。
あなたの娘さんに幸運がありますように。
彼女と楽しんでください。
Elisabeth Dykens

また、過食の原因として説明されていた、脳の視床下部の満腹中枢の変異ですが、これの原因ではないかと言われているのがnecdin遺伝子(大阪大学の吉川先生の発見による)であるらしく、PWSではnecdin遺伝子が機能していませんから、その部分の紹介もしていただきたかったですね。海外のPWSの患者家族会では、直接necdin遺伝子の研究に対して資金援助を行っていますから、同じ日本人の研究者さんの発見によるものですし、継続してPWSとの関連について、吉川先生は記述しておられますから、日本においてもそのようなアクションが起こらないか、と願うところです。

吉川先生のコメント
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/10000201

FPWRのHPより
THE SYMPATHETIC AND ENTERIC NERVOUS SYSTEMS IN NECDIN-NULL MICE
http://www.fpwr.org/research/grant/2006/4

また、番組の中で拒食症の患者さんとの関連の中で、摂食障害の原因としてグレリンの紹介もあり、これはPWSでは血中濃度が健常者の数倍高く、過食症の原因の一つではないかと言われていますし、これも寒川、児島先生の発見によるものですし、これも海外のPWSの患者家族会では、直接研究に対して資金援助されています。娘は児島先生の御研究に血液検体として参加していますが、まだその関連については究明されていませんが、何故グレリンの濃度がそんなに高いのか、判明するだけでも、大きな進歩と思いますし、研究の進展に期待したいです。

児島先生のコメント
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/10000101

prader-willi症候群の摂食亢進におけるグレリンの役割
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20061006

FPWRのHPより
UNDERSTANDING THE ACTION OF GHRELIN IN THE BRAIN: IDENTIFICATION OF NOVEL TREATMENTS FOR HYPERGHRELINAEMIA
http://www.fpwr.org/research/grant/2005/1

フジTVの番組紹介より
遺伝子・DNAという最新の研究を通して、人間の真実と愛を浮き彫りにしていく『サイエンスミステリー それは運命か奇跡か!?DNAが解き明かす人間の真実と愛』。生命の愛しさを真摯に描き、同時にエンターテインメントとして多くのファンに支えられてきたその第5弾を、今まで以上にパワーアップした内容でお届けします。
http://www.fujitv.co.jp/dna/

上のコピーを書かれた方は、正直にエンターテイメントと書かれていますね。幾分かの放送の姿勢に対して疑問を感じておられるんだと思います。放送前にこの番組の事知って、HPを見てみましたが、記述からPWSと類推は出来るけれど、どこにもPWSとは書かれていないので、僕はフジTVの広報に電話をして、お聞きしてみました。ところが放送前の番組に対して内容説明は出来ませんと断られてしまいました。しかし番組の主旨から言えば、疾患名をきちんと告知して、この疾患のことを社会にひろく知ってもらうことが、メディアとしての医療福祉への貢献と考えておられるのであれば、きちんと疾患名記述するべきですね。今からでも良いので追記して欲しいですね。そうでなければ、コピーのように単なる視聴率かせぎのエンターテイメントにしかすぎないのではないでしょうか?。