特別展「石は地球のワンダー 〜鉱物と化石に魅せられた2人のコレクション〜」

大阪市立自然史博物館さんの特別展のブロガー招待に申し込み、今回も当選したので家族と行きました。

特別展「石は地球のワンダー 〜鉱物と化石に魅せられた2人のコレクション〜」
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/tokuten/2017ishi-wonder/
大阪市立自然史博物館のwebより引用

最近の私の興味や関心が「人間/人間外」的なことやその延長としての「生物/非生物」的なテーマにあるので、その観点から生物と非生物の境界線のような存在が、鉱物と化石に魅せられた2人の研究者さんから寄贈されたコレクションからの展示物に無いか探してみました。(宝石のような輝く原色の美しい鉱石が無数に展示されていますが、それはぜひ展示場で直接ご覧ください)

北側隆司鉱石コレクションから

以前ここで拝見した特別展「来て!見て!感激!大化石展」http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20110703/eventの際にも展示されていた、しのぶ石のように、非生物な鉱物ですがその外形は明らかに植物にしか見えないような姿となっていて、形態形成のメカニズムが生物/非生物共に共通した物理的原理により生成しているのだろうと感じます。

しのぶ石

また球状閃緑岩と珪化木と比較できるように置かれていましたが、球状閃緑岩の模様は樹木の幹のようです。そしてとても美しい。

球状閃緑岩

珪化木

これも過去の特別展で展示されていましたが、鉄の原料となる縞状鉄鉱床のスライスされたもの。縞状鉄鉱床は太古の海に溶けていた鉄がその後の酸素を産む微生物の登場で、酸化鉄となり海底に沈殿し、鉱石となり隆起し採掘され鉄の原料となっているものです。
スライスされた標本は初めて見ましたし、とても美しい。様々な変動の痕跡を写す縞模様に、とてつもなく長い時間の呼吸のリズムのようなものを感じてしまいます。

縞状鉄鉱床

砂漠のバラと呼ばれる石膏の結晶も非生物とは思えません。解説文にも何故このような形態が生じるのか原因は不明とありましたが、それは同時に何故バラのような複雑な美しい形態が産まれるのかと同義と感じます。

石膏の結晶

「生物/非生物」と真逆なイメージの正多面体の形態の鉱物の結晶混じりの石たちもとても魅力的でした。プラトン立体そのままのような立方体の黄鉄鉱やその他の多面体を宿す鉱物たちは、おそらくプラトンの時代の人たちの四大元素説の思考に大きな影響を与えたでしょうし、今現在の私たちが観ても息を呑む美しさですね。黄鉄鉱にはプラトンが宇宙そのものとした五角形による正12面体の結晶のものがあるそうですが、探してみましたが残念ながら見当たりませんでした。

黄鉄鉱のパイライト

鉄ぼんざくろ石には後の天文学者ケプラーが発見した菱形12面体の結晶があり、四次元立体のようなその歪んだ形態もまたとても魅力的です。ケプラーは鉄ぼんざくろ石を観たのでしょうか?

鉄ぼんざくろ

金澤芳廣化石コレクションから

こちらも魅力的な展示でした。
化石がよく含まれているというノジュール(堆積物が長い年月を経て凝集した丸い岩のようなもの)の事は初めて知りました。

ノジュール

いったんノジュールを割ってまた元の位置に戻した展示方法のゴードリセラスの化石を観ますと、まるで恐竜の卵のように見えてきます。これも凝集という現象と生物の形態との位相の相似があると感じます。

ゴードリセラスの化石

異常巻アンモナイト(普通の貝のようなアンモナイトと区別する為の名称で変異がある訳ではないそうです)の形態も植物の蔓や茎が伸びていく際の螺旋状を示しているものがあり、これも同じ位相が異なる存在において生じていて面白い。

異常巻アンモナイト

家族で観ましたが、いつもの特別展にあるような、子ども向きの触れる展示が今回は無かったので、娘は少し理解が難しかった様子でしたが、ipadを渡すと、自分の好みのカラーの鉱石を次々と撮影して楽しんでいました。
今回も楽しい企画に参加出来て感謝です。

追記
上記の書込みのうち、黄鉄鉱の正十二面体について、自然史博物館へ問い合わせしましたところ、下記の回答を頂きました、感謝です。

一部質疑があります。レビューに、「黄鉄鉱にはプラトンが宇宙そのものとした五角形による正12面体の結晶のものがあるそうですが、探してみましたが残念ながら見当たりませんでした。」と書いたのですが、実際にそのような五角形による正12面体の結晶のものはあるのでしょうか?
またあるとして、会場にあったのに見落としていたということは無いでしょうか?
以上教示願います。

以下、学芸員さんからの回答です。

五角形正12面体の結晶をする黄鉄鉱は、イタリアのエルバ島産出のものが有名です。
エルバ島は歴史的な産地でしたが、最近では採掘が終了している(掘り尽くされた)状態のようです。
今回の展示では残念ながら五角形正12面体の結晶標本は展示していません。