河野玲 Encadrement +plus

長居植物園のスプリングフェアの後、本町へ。知人の小谷廣代さんのカフェ&ギャラリーのシェ・ドゥーブルさんへ家族で伺いました。

河野玲 Encadrement +plus
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フランス額装のLavisという古典技法を中心とした額の展示という、ユニークな内容でした。
今日は、ちょうど母の日で、河野さんがLavisをイメージした花のクッキーをfacebookで拝見したので楽しみにしていました。(とても美味しかった)

また我家は夫婦ともに銅版画をしていた時期があり、その縁でしりあったし、銅版画と額縁はとても親和性があるので、額自体にとても興味を持っています。
また私が最初に額の魅力に気付かされたのは、中学1年の時、美術の授業で写生した風景を、先生がいつのまにか美術教室の壁に額装して飾ってくださったときに、素のままの絵からの変化に、額の意味を直観的に理解した、そんな体験が基になっています。
フランス額装を始めたきっかけが、子供さんの絵を飾るのに、市販の額に満足できず、自分で作ろうと思われたのがきっかけとか。そんなエピソードも素敵ですね。おそらく子供さんも、私が体験したような、絵の素の状態から、額装されることでの不思議な変容を感じられたのではないかと思います。

ギャラリーのプランが右側に入口があり、左奥壁際に柱があるので、自然と反時計周りの動線になっていますが、様々な額の展示構成もその流れに沿っての配置イメージにされている印象がありました。
額という、どちらかと言えば、作品の引き立て役というか、工芸的なものですし、それ自体を伝えること以上に、何らかのアートとしてのメッセージをこめる時に、配置が手掛かりになっている、そんな印象がありました。
入ってすぐの壁は黒い額縁が2点。

最初の作品はカリグラフィもされているということで、とても強度のある、視覚的表現の、意識の世界とも言えるイメージ。周囲の線は、烏口という製図やデザインで使用されてきた道具で、繊細にインクで引かれています。線と線の間を埋める技法も、紙を貼ったり、手の込んだ彩色方法をしたりと、とても複雑な様相。
分割された額装のラインは、私がいつもイメージする「意識によって世界は瞬間的に分離され、断片化される。無意識はそれを緩慢に連結する」世界を連想させます。

そして、十字のように強度のある形に配置された額。奥の3点は斜め対角に配列。
十字の中央の額。マットの切り方で階段風に見せている。

そして一周して、ややランダムな少し弱いちからの配置で拡散していました。一番左の、反時計回りに観ていった時の最後に観る額が、子供さんの作品を額装されたものなのか(後日、確認すると、キャンドル作家さんが作られたも­ので、ロウを型に流してカメオにしたものだそうです)、キャラクターの顔のようなものが3つ並んでいます。
入口に最初に展示されている、黒い強度のあるカリグラフィーとともにある、意識的な視覚的な構成の額作品から、最後が原初的な笑いのような、無意識の世界へ直接的に伝わるイメージの額作品へと変化しながら循環していて、作品群が円環のように繋がる印象。

アーチャンにたくさんのお菓子をプレゼントしていただき、またフランス額装の技法について、詳しく解説していただき、感謝です。ご活躍祈念。