前谷康太郎「distance」

午後、「見っけ!このはな2012」に家族で行き、JR西九条で降りて東側からのアプローチだったので、最初に梅香堂さんへ。先日伺ったHNARART2012 大和郡山市の旧川本邸での展覧会にも出展されていた、前谷康太郎さんの個展。
(ギャラリーの後々田さんは、9月の我家の陶芸展を観に来てくださり、ブログにコメントまで書いていただきました。改めて感謝致します)

前谷康太郎「distance」
http://www.baikado.org/docs/home.html
梅香堂より

1階に大きなスクリーンがあり、オレンジ色の四角い光の面が膨張して近づいて来たり、縮んで離れて行き消滅。そして再び同様の動きが繰り返される作品。
2階には手前に少し横長のモニターがあり、1階と同様の明滅をする4個の光の面が相互にゆっくりと動いています。
奥には小さなモニターが横3列×縦4段=12個組上げられていて、そこに青い感じの光の荒いテクスチャーの映像が流れていました。(後々田さんから、どのように撮影したのか詳細お聞きしました)
壁面には、それらのイメージの静止画像がプリントされていました。
これらの作品群のそのゆったりとした動きが素敵ですが、僕は特に4個の光の動きのある明滅の作品が印象的でした。(下記映像は我が家の声が入ってしまっているので音声を消して見てください)

そして少し思い出した記憶。20代の頃、友人と始めたサッカーチームが社会人リーグに加入することになり、加入条件としてレフェリー資格者が必要ということで僕がレフェリーをすることに。やってみて、最初の頃は人とボールが入り混じりよく分らない状態が続いたのですが、しばらくするうちに慣れてきて、それら人やボールの動きがグルーピングしてみる事ができるようになってきました。特にサッカーで重要なオフサイドの判定では、DFとFW1とFW2とボールの、この4個の対象物が動きの中から切り出されてくる様は、特に面白く、視覚認知にこだわりのある僕は少し調べてみたのですが、4個という数はやはり瞬間的に判断する時の閾値になっているようで、それを超えると処理スピードががくんと落ちてしまう。そして8個を越えるとカウンティングの過程に入るというメカニズムがあるらしい。

Subitizing
http://en.wikipedia.org/wiki/Subitizing

高速に動いている対象物を瞬時に切り出しグルーピングする人間的な視覚認知能力と同時に、サッカーに限らずスポーツ中継でもスローモーションによるビデオ判定が、人間的な能力を超えて、日常的な感覚では味わえない動きを解析し、私達に新たな認知的快感を味わわせてくれるような、その両面を同時に生じてくるような感覚世界の提示は、今まであまり無かったように思う。
前谷さんの映像作品の提示の有り様が、まだ不完全な予備実験のようなもどかしさを感じさせつつも、そのような世界を切り開いていくのではと感じさせてくれました。
同時に、繰り返し感じる、眼球運動によるトラウマ治療法としてのEMDR的なセラピーへの接近もまた、要請されているのではないだろうかと思う。