泉 洋平 展 “a loom”

CASさんの展示を観て、同じフロアー内のroom Aさんの泉 洋平 展を拝見しました。
知らない作家さんでしたが、会場で少し作品についてお話もでき、制作の意図などもお聞きできました。
会場の長手方向の壁から壁へ、無数の糸をピンと張り、なおかつその束を円筒状にして、真中あたりに、赤く染色して、赤い部分が球体に見える仕掛けとなっていました。
その球体の大きさや位置の高さも違和感なく、極端に見下ろされるでもなく、こちらが見下ろすでもない、曖昧な関係となっている。
見る位置によって、離れていると、オブジェ感が強いけれど、近づくに連れて、糸と糸の間がほぐれて見えてきて、細い存在の集合によって包まれていくような感触がありました。
僕が最近手掛けた、木造の丸太ログハウスの空間に感じるような、外部から遠くから見つめる時はシルエットであり、フィギュアであるけれど、近づいていき、境界を越えて内部に入ると、包み込まれて、それがグランドになっているというイメージに近い印象がありました。
丸太ログハウスの場合は、丸太と丸太との交点の仕口が命であり、交点は概念的なモデルではゼロであり、作図は容易なものであるが、現実に厚みのある事物を組み上げていくのは、職人さんの感覚的な経験がとても重要な要素となってくる。
泉さんの作品でも、おそらく作図構想時の概念的なクリアーさとは異なり、糸を張り上げていく時の繊細な感覚がとても大きな物となるだろう。
泉さんは本当は、たわんだ糸の構成でやろうとしていたらしい。制作時間等の問題で、直線の束にされたらしいが、空間次数がひとつ増える事で、見えてくる姿もより多様なものとなるに違いない。後は今日拝見した、赤い球体と白い糸のイメージがどうしても国旗の三次元版のように感じられる部分があり、そのような分り易いシンボリックなイメージを前景化していくのは、観る人にとって、メタな視線を要請されない分、社会に受け入れ易い存在になるという点はあるけれど、そのような分り易い存在ではない、シンボル化困難な存在を、糸という、これも様々な歴史的な意味合いを持った存在によって構成していく時に、視線の動きを導くランドスケープのような、多様な姿を作り出す上で、要請されることのように感じました。

泉 洋平 展 “a loom”
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room A