Trouble in Paradise/生存のエシックス

こころの未来研究センターさんでの療育に行く前に、三条で降りて見てきました。少し前にアーチャンと同じPWSの患者さんの視覚認知の研究で、「観察者中心座標系がくるくる回転しているのではないか?」との指摘がされている論文を読んだことがあり、アーチャンの描く絵など見ていて、確かにそのような傾向があるのではないかと感じる部分もあったので、興味を持ち継続して関連する研究など読んできていたので、この展覧会のコンセプト読んで、ぜひ見てみたいと思っていました。

Trouble in Paradise/生存のエシックス
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2010/381.html
京都国立近代美術館のホームページより引用

京都市立芸大130周年記念事業協賛という事で、芸大さんが中心となっての様々な研究テーマが展示されていました。
それぞれの研究はとてもベーシックなもので、今後ここからどのようなアートが生まれ、もしくはどのようなセラピーが開発されていくのか、アートはセラピーであるかなど問題意識を感じました。
この展覧会は会場内での写真撮影がOKとなっていて、blog日記への掲載も会場でスタッフさんに確認すると、他の入場者が映りこんでいなければ掲載OKとの事でした(画像転載許諾済)これもユニークな試みと感じます。

宇宙庭(担当: 松井紫朗、森本幸裕、井上明彦)
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2010/381projects.html#MatsuiMorimotoInoue
少し前に、アートコートギャラリーでの松井紫朗展でも拝見した宇宙庭のプロジェクト。アートコートギャラリーでは、映像のみの展示でしたが、ここでは宇宙衛星の中に持ち込まれた銀色のチューブのようなオブジェと資料が展示されていました。


随分前に、宇宙飛行士の毛利さんが、宇宙衛星の中で庭的な試みをされた事を思い出しました。あの時は水を無重力状態に浮かべると小さな球体になり、そこへ桜の花びらを一輪入れると、水中花のようになって無重力を漂うという、宇宙花見のようなイメージで、今でも強く印象に残っていますね。
今回の研究は、宇宙ステーションの中で、オブジェとしてのポイント的な庭だけでなく、その中に入り込んで庭を散策するようなイメージを意識されているようです。定点の定かでない空間の中で、見せ場のようなものを作り出すこと、現代アートの成果が特に活かせる領域が宇宙空間にあったという部分が面白いですね。

未来の家政学・Tea House of Robots
rootoftwo (John Marshall & Cezanne Charles)
PLY Architecture (Karl Daubmann & Craig Borum)
With help from Osman Khan, Chris Johnson, Westley Burger and Robert Yuen.
ミシガン大学(University of Michigan)
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2010/381projects.html#Michigan
こちらはアーチャンお気に入りの展示でした。
白い薄いバリアーに包まれた茶室に小さなロボットが何台か居て、微妙に動いています。解説に、「笑顔を見せるとシャッターが開きます」とあるので、そのロボットに向けて笑顔見せると反応するんんだろうと思って、みんなで繰り返すと、確かに微妙に反応するのでしていると、係りの人が寄って来て、「こちらの壁のモニターに顔を写して、笑顔で歯を見せると反応しますよ」て、早よ言わんかい。でもそんな自分たちの姿を思い出して笑える。しばらくニカッと笑って窓が反応するのを遊びました。
ロボットのモニターが反応するはずという思い込みを、微妙にずらすのが、作者の狙いなのかも。作者にとって、生存に一番大事なのは笑顔によるコミュニケーションなんだろうな。

関係概念としての知覚的自己定位の研究
担当: 中原浩大+井上明彦
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2010/381projects.html#NakaharaInoue
テンプル・グランディン(Temple Grandin)さん考案の自閉症の人の為のハグ・マシンなどが展示されているコーナー。ここの展示はアーチャン一番喜んでいました。ハグマシーンは日曜日だけ体験できるという事で、体験できませんでしたが、中央の床に置かれた、さまざまなハググッズみたいな、抱きまくらみたいなオブジェに抱きついて遊んでいます。

こちらがハグマシーン

狭い箱の中にすっぽり入り込んで落ち着くもの

御自身も自閉症であるテンプル・グランディンさんは、まだ自閉症研究が進んでいない頃から、自分の感覚の違和感を伝えることと、その解消とを含めて、このマシンの開発をされたらしい。確かにアーチャンの普段の行動を見ていると、弱い感覚刺激はどちらかと言うと嫌いますが(例えばほっぺや頭をなでられたりすること)、強い刺激は好むように思います。特にランドセルや手提げカバンには強いこだわりがあり、とにかく一杯詰め込んで重くしないと納得できない様子で、ランドセルなんかは体に較べて異様に重い感じがしていました。そうやってズシリとハグのような重さによる感覚の刺激によって、座標系の乱れを修正しようと無意識に試みているのかもしれないですね。PWSは日本の協会等のテキストでは、自閉症の症状はないのでは、等記述されていますが、海外の協会等では、その見直しが進められているようで、アーチャンのいくつかの振舞は、自閉症との関連を示唆しているのかもしれません。
最近、私が観察者中心座標系、ハグ的なもの、以外に興味を持っているのが、EMDR的な眼球運動を伴うセラピーがあります。これらを発達障害の子供に適用できないだろうかと、個人的に考え、いくつか試していこうと考えているのですが、やはり専門家の先行事例があると、考える上で手掛かりになりますし、いろいろアドバイスも受けることができるので、ありがたいなと思っています。
最近見つけた先行事例として、発達障害児の療育にEMDR(バタフライハグとしてのEMDR)を適用した研究があり、とても注目しています。

発達障害の児童に対するEMDRの適用に関する研究
柴田 健 秋田大学・教育文化学部・教授
http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/18653064

個人的には、眼球運動を伴う事例研究を期待しているのですが、いずれ近いうちに開発されていくのではないかと思います。今回の展覧会を見られて、多くの他分野の研究者さんが興味を持って新しい知見によって研究が進む事を期待したいですね。

Trans-Acting: 二重軸回転ステージ/浮遊散策——宇宙滞在・認知症・庭園・発達障害の研究に基づくトポロジカルな時空と記憶形成の実験
担当: 高橋 悟+松井紫朗
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2010/381projects.html#TakahashiMatsui
こちらもアーチャン楽しんでいました。傾きながらゆっくりと回転する巨大な円盤に乗って、周囲が暗くなり、そこに動く映像が円盤上にシンクロして映し出されると、動いているのに、自分が一点に固定されているかのような感覚になったり、とても不思議な経験をしました。
ここからどのようなアートに結びつくのか、もしくはセラピー的なものへ結びつけようとされているのか、分かりませんが、これ自体の表現より、今後の展開に期待が持てる研究と感じました。