「セルクルとカレ」

打合せの帰路、知人の小谷廣代さんのシェ・ドゥーヴルに立ち寄り、陶芸家の喜多村朋太さんの個展「セルクルとカレ」拝見。

少し前にも、ここで粉引の陶芸作品拝見しましたが、今回は絵付けを小谷さんが担当されたとのこと。セルクル=丸いもの、カレ=四角いもの、という大きな区分がされています。
小谷さんのお話では、丸い鉢に絵付けする時に、片手で鉢の底を持ち、眼の高さあたりで筆で描いたらしい。鉢は球の一部のようであり、描かれた事物は人間的な認知能力の限界から、決してその全体像を捉える事は出来ないで、断片化し、かつつながって絶えず異なるシーンを産み出していく。形態的には周囲から切り取られているが、人との関係において親和的である。
四角い板状の作品は対照的に、描かれた姿は、その小さなピース単位において、きっちりと全て捉える事が出来ていて、複数枚に並べられていく。それらは、でも無限に隙間無くつなげられていく時、その果てもまた、捉える事ができなくなり、掴む事ができなくなる。物質的に連結しやすく、しかし人との関係において、流動的とも言える。

粉引の器を眺めながら、また小谷さんの最近イメージされた死生観のようなお話をお聞きして、白い表面が溶かされた骨のようにも感じられ、目の前のあらゆるものが生命の亡骸であり、それらが現代において、あまりにもビジネスライクに扱われていて、それらを解体していく、ちからとしてのアートを空想した。

「セルクルとカレ」
2010年1月16日(土)ー2月27日(土)
於 シェ・ドゥーヴル
open 12:00-23:00 日祝休