立ち上がる風景(切り起こし)をつくってみよう!

今日は、午後5時から中之島にあるダイビル内のdai studioでの「立ち上がる風景(切り起こし)をつくってみよう!」に家族で参加してきました。
会場のダイビルは、取り壊し建替えが計画されているようですね。建てられた1925年頃の時代の雰囲気も良く感じられますし、設計者が渡辺節、構造設計が通天閣等担当された内藤多仲とユニークな方々。会場に少し早い目に着いたので、見納めにあちこち探検。先日の中之島図書館でのワークショップも懐かしい柔らかな雰囲気でしたし、こちらのダイビルのdai studioは、写真スタジオとして使われていたらしく、ホワイトキューブなアトリエで作業するよりも、いろいろな刺激に満ちていました。
講師は、先日のホネホネ探検隊展のワークショップの際にもお世話になった、池田朗子さん
最初に池田さんの切り起しの写真作品をスライド上映して説明していただいてから作業開始。参加者各自が持ち寄った写真や雑誌から人物等をカッターで切り抜いて、写真の画面から垂直に立て起すというシンプルな方法ですが、出来上がる作品は置かれる場所のスケールやストーリーなどによって、変化に富んだユニークなものが現われてきました。最後に、出来上がった切り起し写真をいろいろな場所に並べて、参加者全員で写真撮影。池田さんが撮られたものを上映されてワークショップは終了。池田さんは普段切り起し用に写真撮る時は出来るだけ自分の思いを込めないような対象を撮っているので、今日のワークショップのように、参加者それぞれの思いのこもった写真が並ぶことで、自分の世界だけでは作り出せない多様なイメージがワークショップ通じて生まれてくる楽しさがあると。
アーチャンにはカッター作業がまだ難しいところもあり、ハサミを使って、切り易い単純な形のもの集めてアーチャン用に用意していたので、すぐに終ってしまい、折り紙に、池田さんの似顔絵や御礼の手紙をたくさん描いていました。
過去に撮ってきた家族写真は、切り起すという事をもちろん意識しないで撮っていましたから、今回のワークショップに参加することを決めてから、切り起しを意識しながら、カメラで撮る際の気持ちがかなり違って見えてきたように感じます。その事もまた面白い体験でした。
講師の、池田朗子さん、主催者の皆さん、ありがとうございました、感謝です。

アーチャンが切り起し写真作っているところ。今日は僕もカッター持って作業したので、作業中の画像はあまり撮れませんでした。

出来上がった切り起し。置かれる場所や組合せによって印象がずいぶん違います。写真はアーチャンとカーチャンが小学校でラジオ体操しているところ、アーチャンだけ切り起ししています。


こちらは、池田さんが講師されたホネホネ探検隊のワークショップの会場風景。ダイビルの写真スタジオに木製の古いデスクがあったので、何となく引き出しに置いてみました。

同じ写真で置く場所を変えてみました。

アーチャンが描いた池田さんの似顔絵。

池田さんのホネホネ探検隊展のワークショップと今回の切り起しに参加したのは、たぶん、池田さんのプロフィールのところから、作品集拝見して、ユニークな視点と感じたところがあり、ほぼ同時に200DOORSの内容発表があって、この切り起しのアイデアというのか、作者のイメージについて、興味を持ったからだと思います。それは娘のアーチャンの視覚認知の特性について考えていたこととのつながりなのかもしれません。アーチャンの場合、重なり図が描けないところがあり、最初はまだ小さいから、描画能力の問題と考えていたのですが、いろいろな年齢のPWSさんの描画を見て、同様に重なり図が描けていないことに気付きました。ただ、視覚認知としては、奥行きや立体感なども捉えているようなので、何故そういう描画をするのか、興味を持ってみているのですが、現時点での自分なりの推測では、重なり図が描けないのでは無くて、重なったものの、背後で隠れてしまう部分への思いや、隠れてしまうことの不安のようなものがあって、常に隠れた部分は補って分離して、空間的な位置関係は無視してでも、並置もしくは、上下して描いているのではないだろうかと思っています。私たちの場合、隠れている部分についての意識はいつのまにか薄くなっていて、普段の生活の中では、ほとんど意識することはありませんが、つきつめて考えていくと、無限連鎖のようなイメージに捕らわれて、不安定な心になってしまいます。そうならないように、どこかで、私たちの頭のネジみたいなものは緩くなっているように感じるのですが、それがもし常に意識せざるを得ない心のありようであれば、とても苦しいものではないかと思います。
池田さんの切り起し=地からの分離の背景にあるものは、他者には分かりませんが、でもどこかユーモラスで、楽しい雰囲気があり、そこにアーチャンたちの表現が転化する何らかのきっかけが含まれているように思えてならないのです。

池田朗子
立ち上がる風景(切り起こし)をつくってみよう!
http://www.artcomplex.net/doors/200sche/index.php?itemid=3578&catid=272
日時
2009月8月9日(日)17:00
会場
ダイビル/dai studio
内容
講師・池田朗子が昨年11月に出版した作品集『光景』の技法-通称「きりおこし」-をやってみよう!スナップ写真や雑誌の人物をポップアップさせることにより、ガリバーが小人の国に迷い込んだような不思議な感覚が起こります。日常の光景を「きりおこし」、自分のスケール感、現実感を体験しませんか?
講師プロフィール
2001年チェルシー・カレッジ・アートアンドデザイン(ロンドン)MAコース修了。2008年「日韓写真展:コミカル&シニカル」(パジュ・ブックシティー/韓国)など国内外での個展・グループ展のほか、大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室などでワークショップをおこなう。2008年作品集『光景―theirsite/yoursight』(青幻舎)を出版。
http://ikedaakiko.net/