安藤忠雄建築展2009

サントリーミュージアム天保山にて、安藤忠雄建築展2009を観ました。今までの安藤建築に対する僕の印象は、どちらかと言えば笑えない建築と感じるし、生理的に受け付けないところがありました。既存建築物の増改築のプロジェクトも、極端な比喩として言えば、ギュスターブ・モロー描くところのサロメのように預言者との会話は首をはねてからでないと始らないような、過去は過去、現在は現在のように、分離並存されたようなものとしての印象がありました。今回の展示のうち、プンタ・デラ・ドガーナ再生計画(ベニス)は、そのような僕の印象を少し変えて明るい方向に向いているように感じられました。古い部分と新しいところとが微妙にシャッフルされ、混ざり合っている。胃の中で反芻され、ドロドロになっていくような、光の落ち方が、目のまだよく見えないひなに親鳥が餌を口移しで与えるような、そんな形の無いエネルギーだけのような、ビオトープのような光景が僕の中でこころ落ち着くものとしてイメージされてきた。
海辺の小住宅の構成も楽しい感じがする。ガチガチの住宅に対して、既存の海岸にあるコンクリートの通路と擁壁の断片のようなピースと、それらをつなぐイメージのデッキ状の平面(これは模型にしか無いので提案で終ったのかもしれないが)がとても弱い表現で良い感じ。この弱い力が、ランドスケープには必要なんだと思う。多くの作品から、この小住宅を選んで展示されているところに、新しい展開を感じました。

安藤忠雄建築展2009
http://www.suntory.co.jp/culture/smt/gallery/index.html
<<