市場原理 格差広げた 

橋下徹知事は16日、35市町村の全国学力調査の科目別平均正答率を公表した。序列化につながる懸念などから公表しないよう求めた文部科学省の通知を無視しての判断。「序列化が生じるのか、今後じっくりと見させてもらう」という。海外の教育改革に詳しい大阪大の志水宏吉教授に、英国で行われた同様のランキングがどのような結末を迎えたか聞いた。(中略)
私は、メリットよりデメリットの方が大きいと思います。実際に起きた事例を目の当たりにしたからです。
1991年から93年にかけて英国で研究をしていたとき、サッチャー首相の教育改革が行われ、全国一斉テストが導入されました。結果は学校ごとに公表され、プロサッカーになぞらえて「リーグテーブル」と呼ばれる順位表を主要紙に掲載。あわせて学校選択制を導入したため、結果として点数が高い学校に生徒が多く集まるようになりました。生徒数に応じて予算も配分された。教育現場に市場原理を持ち込んで競争を促すことで、学力を向上させようとしたんです。
その結果、学力向上については一定の効果はありましたが、勉強ができる子とできない子の格差が広がった。成績のいい学校は人が集まり教育環境も充実する、悪い学校は逆の現象が生じるのだから当然ですよね。強いものは勝ち、弱いものは負ければいいと。随分世知辛くなった。
――大阪では学校選択制は行われていません。成績を公表するだけで同様の問題が起きますか
市町村ごとの成績が公表されれば、保護者は引っ越してでも成績のいい地域に子どもを通わせようとするかもしれない。不動産会社も「ここは学力の高い地域」と住宅販売に成績データを利用するでしょう。おのずと地域の序列化を招くことになります。
朝日新聞より引用
http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000810180002

少し前から、大阪府特別顧問に就任された藤原和博http://www.yononaka.net/に注目して著作等拝読しているのですが、藤原氏の最近の著作「つなげる力」に上記インタビューと関連するような、気になる記述がありますね。藤原氏のお考えはユニークだし拝読した限りでは共感できるところ多いと感じます。

第六章 人を動かす リズムとテンポをよくする
(一部引用)
文科省が審議会を組織して万全の態勢で臨んだ新指導要領の「ゆとり教育」路線が、実現までに数年経ってしまっただけで、どんな評価を受けたかを見れば、誰の目にも明らかだろう。「ゆとり教育」は当時、ほとんどの国民が望み、マスコミが支持し、有識者や評論家も文句なかった路線だった。しかも、素晴らしい政策だと評価され、この路線をまっすぐに突き進んだフィンランドが、逆に、PISA型学力で世界一になっている事実もある。
最初に「正解」が用意できる時代は終った。

つなげる力

つなげる力

とてもねじれた現象が日本では起きているのでしょうか?藤原氏の著作にある「ゆとり教育は当時、ほとんどの国民が望み、マスコミが支持し、有識者や評論家も文句なかった路線だった。しかも、素晴らしい政策だと評価され、この路線をまっすぐに突き進んだフィンランドが、逆に、PISA型学力で世界一になっている事実もある。」ということが何故日本ではうまくいかなかったのか、についての記述はここには無いし、よく分かりません。もしくは、うまくいっているのにそれを評価する方法が見当たらないのか?(藤原氏が提唱し推進実行されている、よのなか科の授業は、ゆとり教育の一つの実践の形のように感じるが)
その後日本が参考にして導入した英国等の方法は現在ではデメリットが多く、英国の周辺諸国では既に全国統一テスト的なものは廃止していく方針らしい。公開云々より、統一テスト的な教育施策の是非自体が先に問われて良いのではと思う。下記の著作も警鐘を鳴らしている。