妖精のイメージ

先週の療育は先生とアーチャンとだけで行い、僕達夫婦はローパーティションの奥のソファで待機していました。その時、研究室に置かれていた、サイエンスの雑誌を読ませていただいたのですが、3月の療育の時に、部分と全体の認知特性の説明として一部紹介いただいた内容が気になっていて、再読してみました。

日経サイエンス1998年3月号
イリアムズ症候群が明かす脳の謎(翻訳:正高信男先生)
下記は概要の紹介のみです。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/9803/Williams.html

別冊日経サイエンス159
脳から見た心の世界 Part3
イリアムズ症候群が明かす脳の謎
http://www.nikkei-science.com/page/sci_book/bessatsu/51159/51159-maegaki.html

http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20080301/ryouiku

課題2「絵をおぼえる」のところで、小さな「ひ」の文字を並べて作られた大きな「く」の絵を見て書き写しましたが、全体像の「く」のみ描いて、細部の文字の「ひ」は描きませんでした。ITさんから、他に何か見えるかな?と聴かれてから「ひ」を形に添って書き足し始めましたが、自力では最初から認識できていないのではとのお話。

健常者の場合は見たまま「ひ」を並べて「く」を描くパターンが多いらしく、染色体起因の疾患の子供達では、疾患ごとに特徴的な描き方が見られるそうです。その研究によると、ダウン症候群の場合、アーチャンが描いたのと同じように、全体の文字として見えた形しか描かないらしく、ウィリアムス症候群の場合は部分の「ひ」の文字を並べて描くが、しかし全体像としての「く」の形は認識出来ないで、バラバラな並び方になっているそうです。

それで、何かさらに述べられたものがないかと探してみましたら、アメリカの患者家族会で、論文の原文をホームページに公開されているのを見つけました。

Williams syndrome and the Brain
http://www.wsf.org/family/news/lenhoff_sa.pdf

その論文には、上記の、認知のこと以外に、ウィリアムズ症候群児達が、妖精のイメージの源ではないかとの推論が一緒に述べられて、とてもユニークなものと感じました。

このところ、障害者とアートについて、いろいろな関連する著作など読んでいて、いろいろな事を感じます。

アーチャンと同じ、prader-willi症候群の少女を描いた、17世紀のスペインのファン・カレーニョ・デ・ミランダさんの事も気になっていて、最近ミランダさんの事を取り上げられた「怖い絵2」も拝読してみました。

怖い絵2

怖い絵2

中野京子の「花つむひとの部屋」  
http://blog.goo.ne.jp/hanatumi2006

http://www.artrenewal.org/asp/database/image.asp?id=22258
http://www.artrenewal.org/asp/database/image.asp?id=22259
Eugenia Martinez Vallejoの肖像画

ほとんど取り上げられる事はないであろう、ミランダさんのこと書いてくださって、とても嬉しいですね。おかげで、僕のblog日記へ、ミランダさんの事で検索してこられる方が、最近増えてきたし、その延長上で、PWSの事も知ってもらえればと思います。

ここでは、直接prader-willi症候群の少女の絵画についての言及はありませんでしたが、次の章のヴェラスケスのところで、何故この時代に、多くの障害者達の肖像画が描かれたのか、について、作者の中野京子さんが推測を述べておられました。でも、少し文章が短すぎて、まだよく分らないな、というのが今のところの感想ですね。
僕もそのことに興味があったし、また好きなアーティスト(ゴッビ達をたくさん描いた銅板画のジャック・カロや、失明の後、失楽園を口述筆記した作家のジョン・ミルトン)が、この17世紀の頃の時代の人であることから、この時代の雰囲気を、もっと詳しく知りたいと、さらに思うようになってきています。科学革命の起きる寸前の暗闇であったのか、いや、その兆候は既にあって、希望を感じ始めていたのか。

僕はたぶん、リアルに障害者達を描いたヴェラスケスやミランダさん達の表現よりも、デフォルメされて、キャラクター化されたようなゴッビ達をたくさん描いたジャック・カロや、古来の妖精達をイメージしていった人達の、感性により近いものを感じているのかも知れません。
でも、ヴェラスケスやミランダさんも相当ユニークなアーティストであったようにも感じるし、もう少し様々な資料を読み込んでみたいと思いますね。