ロートレック展

知人からチケットを頂いたので、観てきました。(サントリーミュージアムは、文化の日は以前は無料の日だったのですが、今年は中学生までで、大人は半額でした。)
あまり詳しくない作家さんだったのですが、展示構成が素晴らしく、リトグラフ(石版画)と厚紙に描かれた油彩画中心に、ムーランルージュを取り巻くモデル達の写真やコメント、他の画家達の描いた作品を、流れるように配置されていました。
舞台の一瞬の出来事をとらえる視点をみて、僕は写真を利用しているのかと思いましたが、詳しいところは分りませんが、彼が写真を利用していなかったのだとしたら、先日のプロフェッショナル仕事の流儀の中で、服巻さんが説明されていた、自閉症の視覚の特性としての、フォトグラフィックメモリー(体験を写真のようにパッと一瞬で全体を記憶してしまう能力)的なところが人並み外れてあったのかもしれないですね。
確かに、展示作品の多くが、厚紙に描かれた油絵で、普通は、厚紙では油の影響で紙が酸化してすぐに劣化するから扱われない技法を、彼がむしろ好んで使用したのも、その記憶をすぐに定着させようと重ね描きが容易に、厚紙が油分をすぐに吸い取ってくれるからかもしれないですね。
ムーランルージュリトグラフのポスターのうち特に大きな、アリスティド・ブリュアンを描いたものは100cm×150cmほどあり、当時はおそらく実際に石版を使っていたのか、こんなに大きな物をどうやって製版し、印刷したのか、とても興味深いですね。僕はその作品のテーマやコンセプトとともに、それをどうやって作ったのか、も同時に知りたいので、じっと作品を見つめてみました。そうすると、中央に一本の継ぎ目が薄く見えてきて、二枚の版で継いで作ったことが分りました。それでも、たぶん、最低三色は使ったでしょうから、3×2版=6枚の版が必要であり、制作は大変だったろうなと感じます。これは直接版にロートレック自身が描いたのか、それとも職人さんがロートレックの原画を用いて製版をサポートしたのか、どちらなのだろうと空想する。どちらにしても、文字は反転ですから、これはおそらく原画を転写して製版したんだろうなと推測します。それを説明するように、隣に反転させたポスターも展示してあり、展示の説明では、その辺りについては触れていませんでしたが、知りたいところですね。また時間掛けて調べてみようと思う。
少年の頃、両足の骨折が元で、下半身の成長が止まったらしく、骨折だけでなく、解説では先天性の成長障害との話もあるらしく、夭折の彼の、最後の頃の、とても暗い雰囲気の絵画を見て、彼の内面がどうであったのか、孤独であったのか、もし著作があるのならば読んでみたいと思いました。

ロートレック展
サントリーミュージアムのHPより
http://www.suntory.co.jp/culture/smt/gallery/index.html