TV出演依頼

先日、某TV局より、TV番組への出演依頼がありました。企画書には他の疾患とともに、難病認定への第一歩ととして等のコメントがあり、出演すべきか否か、判断に迷いましたが、家族と相談の上、お断わりしました。
このような企画をしていただいた事自体には、とても感謝しております。
現状、娘の場合、まだprader-willi症候群の症状で、日常生活が難しい状態ではありませんし、今のまま、見ていただいても、生涯に渡る障害の困難さは、うまく伝わらないだろうと思いました。
そして、現状では、社会の多くの方にprader-willi症候群の事を知っていただく、ということ以前に、患者家族自身が必要としている情報が、様々なレベルで不足しているし、そちらの方が、より重要と私達家族は考えています。それには、インタラクティブに情報交換可能なネットの機能を生かした情報伝達の方が、より好ましいと現状、私達家族は考えています。
以下、TV局の担当者さんへ御送りしたメールの概要です(一部改変)

メールありがとうございます。
prader-willi症候群だけでなく、多くの難病をテーマに取り上げていただけるそうで、感謝致します。
当方の拙いblog日記も読んでいただいたそうで、重ねて感謝致します。

御依頼の件ですが、家族と相談してみました。

少し長くなりますが、記します。

prader-willi症候群の症状は多岐に渡り、低身長、低緊張、知的障害、行動面情緒面の障害、過食症、などなど、あります。遺伝子の変異の領域は判明していますが、その発症のメカニズムはまだ完全には解明されておらず、また、成長に従って、症状が段階を追って生じてくると言われています。
主に、過食症のところに焦点を当てて、言われる事が多いのですが、これも統計的には、3歳頃から発症すると言われていますが、娘は現在8歳になりましたが、まだ、問題なく生活しております。問題行動などが無いので、blog日記を書く余裕があるのかもしれません。
私達家族が、blog日記を書き始めた理由としては、そのような発症の状況が、実際どんな風に成長とともに変化して、生じてくるのか、どこにもそんなテキストも無く、よく分らない状況で、情報が無いなら、自分たちで記録を残していくしかないなと思っての事が大きいと思います。
娘が生まれた頃は、情報も少なく、3歳頃から過食症になり、云々と聞かされていたので、とても不安でしたが、現在のところ、まだ重い症状も無く、嬉々として小学校にも登校しています。
ですから、いずれ生じてくるかもしれない、重い症状に不安もありますが、今現在の私達家族には、まだ、そのような悩みも少なく、今の娘の状態を見られたら、どこが悪いの?と感じられると思います。
現在、重い症状で苦しんでおられるご家族からすると、そのような状態でメディアに取り上げていただいても、たいした疾患ではないという、固定観念を持たれてしまうという懸念を感じられると思います。

厚生労働省の難病認定と言いますか、現在、日本PWS協会http://www.pwsa-japan.org/(当方は所属していません)が提出しているのは、難治性疾患克服研究事業という、治療法開発の為の研究対象に認定して欲しいという要望書です。それの専門家による懇談会でも、一部委員からPWSは、「それほど深刻な病気ではないのじゃないかな」との患者家族としては、看過できない見解が述べられ、厚生労働省のHPに公表されています。http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20070619/memo
ですから、娘のような、現在まだ重い症状が発症していない患者家族が出演することが良い事なのか、どうなのか、難しいところと感じています。

また、娘の症状が、もともと軽いのか、私達のアートセラピー的な関わり方が良い作用をしているのか、これも立証のしようもありません。TV的には、そのようなアートセラピー的な関わり方は、ビジュアル的にも伝え易いと感じられると思いますが、私達夫婦はアートに関しての専門教育も受けておりますので、知的障害児に対して、どんな風に関われば、良いのか、ある程度スキルもありますが、TVの短い時間中で、その制作の断片だけを見られた患者家族の方々で、そのようなスキルなしで、アート制作のみを上から与えるような形になりはしないかと、懸念するところもあります。一歩間違えると、こだわり行動を惹起してしまう懸念が大いにあります。

それで、現在のところ、私達夫婦としましては、TVメディアでの短い放送の時間の中で、伝えていくことよりも、blog等のネット情報で、時間をゆっくりと掛けて、インタラクティブに情報交換しつつ、正確な情報伝達が行えるものに、集中していきたいと、思っています。

声を掛けていただいてありがたいのですが、今回は、御協力させていただく時期では無いと結論いたしました。
これからもよろしく御願い致します。