クリンもだん美術展2006

お昼から家族で御伺いしました。
円形のユニークな形をしたギャラリーでの展示を見た後で、シンポジウムをお聞きしました。シンポジウムは障害者のアートに関わるプロジェクトを実践されている方々だったので、とても濃い内容で、4名のパネラーさんの熱意が伝わってきました。このシンポジウムの内容をぜひ記録集として、ネット等で発表してほしいなと思いました。

シンポジウムでお聞きした内容をメモしてみましたので、概要を記します。2時間という限られた時間の中で、4名の方の活動の紹介があり、1部と2部のディスカッションに分かれていましたが、どちらもパネラーさんそれぞれの活動の御経験をベースにした内容でしたので、メモはパネラー毎にまとめて記しています。お話と共に映し出される映像で紹介される製作風景や作品の数々も素晴らしく、アートに没入しているとお話のところが、記憶から飛んで断片的なメモになってしまいました。
Q&Aのところで、僕も少し質問してみましたが、山下里加さんの言われていた、「かわいい雑貨」のコンセプトのところ面白かったですね。アーチャンの絵をずっと見てきて、今はおそらく「頭足人」以後の言語を少し獲得した時期なのでしょうが、その未分化な曖昧な文字と描画の混じったような表現の魅力は「かわいい雑貨」というコンセプトがぴったりだと思うし、おそらくアーチャンは、このまま大きくなっていくのではないだろうかと想像している。自分自身に対するメタな視点を獲得できるのか、出来なくてももちろんかまわないけれど、その境界線のような雰囲気が「brut」的なアートの魅力かもしれませんね。

第一部:パネラーの自己紹介と活動内容の説明

山下里加さん(アートライター 「日本発、障害ある人の表現活動をめぐるニューマガジン「brut」」編集人 図書喫茶ダーチャ・主宰http://dachadacha.exblog.jp/
美術専門雑誌、一般雑誌に文章を書いている。2000年頃から、障害者アートに関連する情報が職業柄たくさん入るようになってきた。さまざまな場面で障害者アートに関連する出来事が盛んになってきているが、それらの情報をまとめてアウトプットする場が無いな、と感じていた。障害者アートを紹介しても単発であったりする。それで、「アートでつながる ひと・もの・こと」というコンセプトの雑誌「brut」を作ろうと考えた。
雑誌で紹介した施設等を映像で紹介
すずかけアートクラブのSさんの紹介:10年間作品を作りつづけ、評価も高くされていて、作品購入された方が何人もいる。でもクラブで製作するのは月2回だけで、平日は仲間と一緒に作業所で働いている。(山下さんは、絵一本で生きていくのではなく、作業所での生活重視される生き方を、とても賢明なこととして評価されていました。同感ですね)
最近では海外のアールブリュット美術館の方も日本の障害者アートに感銘を受けて、作品収集の動きも出てきている。でもそれは健常者の世界においても同じ事であるように、ほんの一握りの方のことであって、アートに過剰な期待を掛け過ぎないことだ。でも、障害者アートを紹介する機会は少ないので基盤作りは行いたい。
以前企画した「かわいい雑貨展」で気づいた事があり、知的障害者が作品を強い気持ちで作り出すことと、人が「かわいい」ものを買うときの気分はかなり近いのではないかと感じている。
収蔵されないアートが意味が無いと言うことはもちろんなく、ひとつのジャンルでうまくいかなくとも、いろいろな方法、世界があるから、いろいろと試してみる事が大事。

韓国の障害者アート普及活動されている方(日本語通訳):資料にお名前無いので後ほど追記補足します)
過去20年間活動してきた。韓国では障害者に対しては養護教育が中心で、芸術活動はあまりされてこなかった。
アートを通じて知的障害者に対する社会の偏見や認識を変えていく事ができるのではないかと考えた。
障害者合唱団の設立(現在では海外公演も行っている)
全国規模の写生大会(現在では98団体3400名参加、うちボランティアが1000名。運営費は全て企業等からの寄付によるもの。)
障害者アートによって、社会全体と共に生きるということを実感でき、障害者が自信をもつことが出来る。

柴崎由美子さん(たんぽぽの家アートセンターHANAプログラムディレクターhttp://popo.or.jp/index.php) 
たんぽぽの家に1997年から参加。エイブルアートの活動から、アートを通じてまちのなかへ、という動きに変化してきた。
アートによる障害者の変化の経験について、造型に関わる事が彼らにどんな風な影響を与えてきたかについて。
Yさんの場合:映像にて紹介
最初はピカソ等の画集を見て模写をしていた。次第に対象が外へ、写生などに変化してきた。Yさんは自閉的傾向があり、コミュニケーションも苦手であったが、絵の制作の変化とともに、次第に言葉が増えコミュニケーション等が強くなってきた。作品の評価とともに、自信に満ちたアーティストとして歩み始めている。
Sさんの場合:映像にて紹介
本人説明で船の絵、でも舟には見えない→線になった服、ピアニスト、テノール、花等の表現の変化説明。
Iさんの場合:映像にて説明
起きている間ずっと手かヒジを動かし、何かをやっている方。ずっと文字を書いているところを書の先生が見られ、書として発展していった。薬の袋を始めとして収集癖があり、絵を描こうと誘っても、鉛筆の削りかすが欲しい方が気持ちとして大きく、鉛筆削りをずっと続けていたりする。
自立支援法を利用して、たんぽぽの家においても、身体障害者の方以外の様々な知的障害、自閉症アスペルガー症候群等の方が通ってこられるようになってきた。ある自閉症の男性は作業所にも通えないで、ずっと自宅で暮らしてきたが、アート製作通じて、たんぽぽには通えるようになった。

ひと・アート・まち おおさか 12/1-8
http://popo.or.jp/new/detail.php?cid=86

石井ゆみさん(グラフィックデザイナー、クリンもだん美術教室講師http://www.asahi-net.or.jp/~um9k-szk/art-class/
クリンもだん美術展は今年で7年目。本年は韓国の写生大会に参加し、参加者が金賞を受賞した。
教室での製作の様子を映像にて紹介。
絵がうまく描けるようになるという事よりも、それぞれの人が、自分なりの表現の仕方を発見していって欲しい。(手に障害があり、長い時間絵筆を持てない方が、そのハンディから、点描画法を自分の表現として身に付けていかれたところ映像で紹介)

第二部 生きる力の可能性について:ディスカッション

  
クリンもだん美術展2006
シンポジウム「知的障がい者の生きる力の可能性」(2006.11.26 14:00〜16:00)
2006.11.26〜12.10
場所:應典院
http://www.outenin.com/

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クリンもだん美術教室のblog