プーシキン美術館展を観る

国立国際美術館にて、プーシキン美術館展を観る。
印象派以降の作家中心の展示。全体を通して、親しみを感じる作品が多く、コレクションを寄贈された二人のコレクターの志向が感じられる。後期印象派キュビスムの時代に移るとともに、分析的で断片的な、鉱物質的な表現に変化していくが、作品から受けるスケール感のようなものは、変わらず、気持ちの良いものが多かった。

印象に残った作品
ゴーギャン木版画のTe Atua
これは小さな木版画ですが、何が描かれているのかよく分らないような、深い闇の中の世界のようであり、和紙と木版画の木のテクスチャー感が凄く良い。カタログの解説読むと、裏から文字のある同じ絵が貼られて、陰影効果を出す狙いの作りだったものが、ここのコレクションは、それが何故か剥がれてしまったものらしい。そんなテキストは、会場の展示のところにも添えておいて欲しいね。
マチスの金魚鉢のタブロー
四匹の赤い金魚、目と口のドットのような表現が八個並び、水面に、そのうちの三匹の上から見た姿。周囲のギザギザした複雑な観葉植物の葉の形へと、徐々に複雑に広がっていく。人間の眼の機能から、全て計算され尽くした作品だけれど、冷たくなく親しみを感じる表現となっている。
ゴッホの中庭の囚人の模写
時計回りに回転している囚人達の光景のタブロー。時計回りは聖なる回転方向だけれど、救いようの無い絶望感が漂う。

今日は何となく、行き当たりバッタリな感じで出掛けた。シーザー・ペリさんデザインのやさしい雰囲気の空間は何度訪れても気持ちの良いものだ。それだけの為に行きたくなるのかもしれないね。近くに気楽に行ける美術館があるというのは嬉しい。
先日、NHKの番組、プロフェショナル仕事の流儀で、パティシエの杉野英実さんの、小さなケーキつくりの質感や味へのこだわりのところ見ていて、建築もまた、このように、小さな小さな部分の集積で、多様な雰囲気を作ることが、空間を訪れる人への印象を決定つけるんだと、再認識する。