福岡道雄展「飛ぶ蚯蚓(みみず)」

信濃橋画廊にて、福岡道雄展「飛ぶ蚯蚓(みみず)」を観る。
もう25年以上前、10代の時に、福岡先生の作品初めて観て、アート作ろうと思うきっかけになったし、感想とか批評とかのレベル超えて、僕にとっては、福岡先生の作品観る事は喜び以外の何物でもない。ぜひ、世界中の人々に観てもらいたいものだ。

今回の展示は三点。黒のポリエチレン製の彫刻。
蚯蚓の自殺」楕円形の低い台座の上に、複数のミミズが、のたうち死んでいる光景。2点
「飛ぶ蚯蚓(みみず)」目の高さに合うように高く伸びる20センチ角ぐらいの台座の上に飛び上がろうとする感じのミミズが一匹居る。

福岡先生の著作、「何もすることがない」の中でも言われているように、置かれる彫刻以上に、黒い台座に惹かれるところがある。それは文楽人形遣いの黒子のようでもあり、意識と無意識を繋ぐ前意識のような、夢と現実の境界線のような光景を産んでいる。過去の黒い彫刻は概ね風景彫刻のような、箱庭的な縮小された世界が描かれていたけれど、このミミズの作品は原寸大の世界である。昆虫類は現実の命であるけれど、人間から見るとき、どこかで、何かのイメージの縮小版というか、原型は有りはしないがディフォルメされたような気分を起こさせると思う。ミミズはどうなんだろう?何かの縮小版という感じはしない、むしろアメーバとか目に見えない微生物的なものが、拡大され、視覚化されたような、そんなものかも知れない。無意識の判断の階梯の無い、並列的な世界へと、誘われる。

何もすることがない―彫刻家は釣りにでる

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